バンドワゴン
AKBを中心に回っていた数年前までのアイドルブームのオリジネーターである秋元康が、これまで自分とは関係のないところで起こっていた諸々を自分の手中で帰結させようとしているのがラストアイドルであると自分は思う。
振り返ってみるとアイドルブームの最左翼であった吉田豪が絡んでいる時点で第一義は達成されていた。
吉田豪を始めとする有名審査員陣の采配による期待通りの番狂わせ、しかし偶然を必然に見せる秋元康のプロデュースワークにより、その炎上さえもマジョリティの機嫌を損ねない形で決着が着いた。
番組が始まった当初このバンドワゴンという曲はとてもつまらない曲に聴こえたし、つまらない曲だという感想は今も変わらないのだけれど、8月からの4ヶ月で、この大した事のない歌が非常に意味のある曲に仕上がった。
割と展開の単調なのは、この曲がプロローグの色を多分に持ち合わせているからなのかもしれない。
紅白歌合戦もCD売上枚数もゴールにできなくなった2018年、J-POPが消え去ろうとしているのが急速に現実感を増しているこの時代に、ラストアイドルで秋元康はどう時代を終わらせるのか楽しみだ。
テレビ〜時々の神よ
自分はまだ全然子供だったので記憶にも無いのだけれど、とんねるずは97年3月で一回終わっている。正確に言うと「とんねるずのみなさんのおかげです」という番組は終わっている。
その3ヶ月後に始まったのが、現在まで続いている「とんねるずのみなさんのおかげでした」だ。
とんねるずは1回目の終わりを迎えた後、20年間もそのまま番組をやってきた。
今、97年の当時の感じが一番体感できるのが、「とんねるずのみなさんのおかげです」の最終回のエンディング曲だったという「テレビ〜時々の神よ」である。
最終回に合わせて作った曲かと思えば、この曲は94年12月に「ガニ」というシングルのカップリングとして発表されており、最終回から3年も前に作られた曲なのである。
じゃ、94年というのがどういう年だったのか、それはこの曲が収録された「ガニ」の売上がそれ程芳しくなく、とんねるずが音楽活動を縮小していく事にも現れているように、売れてから初めて彼らの活動に翳りが見え始めた時期だったのではないかと思う。ちなみに「ガニ」の発売の3ヶ月後、ダウンタウンの浜田が歌う「WOW WOW TONIGHT〜時には起こせよムーブメント」が発売されている。
「テレビ〜時々の神よ」は
"テレビを見終わって なんだか空しくなる
確かに笑ってたけれど 何を笑っていたのか"
という冒頭の歌詞が印象的だ。
作詞はもちろん秋元康。
石橋貴明がよく言っている事だが、お笑いスター誕生で他の審査員達が殆ど評価してくれない中、タモリだけが「なんだか分からないけど面白い」と自分達を唯一正当に評価してくれた事が後々の自信に繋がったのだという。
これがとんねるずのお笑いの本質なのだと思う。彼等はこの事に極めて自覚的で、時に自嘲的である。
それでも1回終わってから20年間また続いてきた"意味の無いもの"の終わりを告げたのは、やっぱり"意味"だった。
最後に「北の国から」くらいは見たい。
風に吹かれても-曖昧なままでSo cool!
不協和音でサイレントマジョリティー路線の決定打を出した欅坂。新曲はそういった形で出来上がったパブリックイメージの逆を行く狙った様な明るい曲調の「風に吹かれても」。
どうしても比較したくなるのはAKBが2011年に出した「風は吹いている」だ。
あれだけ膨大な数の曲を書いていれば、同じようなタイトルの曲が出てきても仕方ないとは思う。
にしても、「風は吹いている」は「風に吹かれても」とは違い、硬い緊張感のある曲だった。なんだったら「風は吹いている」の方が欅坂っぽいかもしれない。
「風は吹いている」と言えば、その当時まだまだ生々しかった震災を意識した、ある種の復興ソングだった訳だが、AKBの曲としては正直印象も薄く、翳りの兆候が見え始めた曲だったと思う。
では、今回の欅の「風に吹かれても」はどうなのだろうか。AKBの時、"希望"として大きく描かれていた"風"は、欅坂では"たわいないもの"として描かれている。
この曲における"風"というのは今世間で起こっているちょっとした欅坂ブームの事なのではないだろうか。全盛期を終えたAKBは張子の虎だ、これは社会現象として扱われてブームに翻弄されてしまった結果だと思う。秋元康の、欅坂のブームは終わるだろうけど、そんときはそん時で…というような意思表示がこの曲なんじゃないだろうか。
つまり、AKBの時は風が吹き止む事すら予見しない攻めの姿勢だった秋元康が、欅坂では一転してケセラセラな態度を取っているのである。
正直な話、これまでの曲に比べるとインパクトには欠ける曲だと思う。が、インパクトが無くて当たり前、敢えてそこで戦う事を辞めた曲。YESとかNOとか結論を出さない事もある種の答えなのではないだろうか。
ウイングマン〜異次元ストーリー
桂正和の処女作。
仲の良い鳥山明は相当に桂正和の影響を受けていると感じた。サイバイマンの元ネタはこの漫画に出てくるシードマンだったし、グレートサイヤマン編はモロにウイングマンという感じ。
光の鳥山明、影の桂正和という感じで二人の作家は表裏一体と言って良いと思う。
文庫版で読んだのだが、一巻の解説を書いている作家は鳥山明だった。
ウイングマンの素晴らしいのは、作家の処女作だけあって、前半から後半にかけて作家の成長がありありと読み取れるところ。前半のガチなSFっぽい設定もゾクゾクして面白いのだけど、後半のあおいと美紅のどちらを選べば良いのか思い悩む健太の姿は、桂正和の後の作品の萌芽という感じである。
今の時代なら、前半のミステリアスな雰囲気のがウケると思うが、時代がラブコメを要請したのだろう。桂正和に恋愛モノの才能があり過ぎたのかもしれないが。異次元人のあおいが瀕死の状態で真の姿を暴かれてしまった時、ウイングマンが必死に目を逸らしながら戦うシーンはグッときた。
ストーリーもさることながら、桂正和のメカニックデザインが素晴らしく格好良い。ウイングマンのスーツ、ウイナア・ウイナルドの洗練されたデザイン。発表が1983年なのだけど、東映ヒーローの後のメカやスーツのデザインに絶対影響を与えていると思う。ウイングマン自体が東映ヒーローを元ネタにしているのに、逆に本家に影響を与えているカタチだ。
作中のキャラクター的なとこでいくと、主役の広野健太を取り巻く周りの女の子達はとにかく報われない。最も側にいたあおいさんさえ最後は哀しいクライマックスである。
作品通して「夢」というのがキーワードになっているが、夢を必死で叶えようとしてる人の周りってのは得てして報われないもんなのかもしれない。
夏はニューウェーブラテンで漫才気分
80年代の伝説、THE MANZAI。
その、とある回のオープニング。
ラテンぽい音楽に乗せて、
たけしが、紳助が、のりおが躍り狂うナウい感じのオープニングだ。
この曲が何の曲なのか、しばらく引っかかっていたのですが…。
ニューロマンティクスのファンカラティーナバンド、モダンロマンスの曲であった!
このモダンロマンス、学生時代に一枚100円でアナログ盤を購入し、よく聴いていたバンド。
ニューロマンティクスとはいえ、シンセメインと言うよりはラテン要素の強いバンドである。
分かりやすく例えると、イギリスの米米クラブというか…。トムトムクラブとスペシャルズとデュランデュランを足して3で割ったようなバンド。
持っていたアルバムは日本編集の「ファニータ」というベスト盤で、THE MANZAIで使われていた「Ay Ay Ay Ay Moosey」は入っていなかった。が、今はCDでベスト盤も出ているようです。Apple Musicでも聴けます。
シュートサイン
こじはること小嶋陽菜のAKBラストシングルはプロレスの曲。
シュートサインというのはプロレスの「ここからガチで戦う」という合図らしい。
この曲はテレビ朝日でやってる「豆腐プロレス」というAKBのドラマの主題歌なのだが、
これも今までのAKBの今までのドラマとは少し違った雰囲気で面白い。
何が狙いなのかイマイチ分からないし、筋書きもそこまで良いとは思えないが、
とにかく雰囲気で魅せるドラマだ。
(※最新の7話は少しオチャラケた感じでいただけなかった)
マジなのか悪フザケなのか狙っているのか、そのへんがよくわからない所が好きだ。
「シュートサイン」は久々に歌謡曲している曲調だけど、こじはると言えば「ハートエレキ」をはじめ、
艷っぽい歌唱がこういうシュートサインみたいな曲にマッチしている。
全盛期のAKBのボーカルの象徴だったこじはるの声がこのシングルで聴くのも最後かと思うと口惜しい。
曲のアレンジでいいところは終盤の少しディスコっぽいブレイク。
終盤になるに従ってどんどん盛り上がっていく展開が聴かせる。
こじはるというのは歌手としての実力で言えばグループ随一だったと思うのだが、
そこまでそういう印象が無いのは歌だけじゃなくて彼女が何でもできちゃう人だったからだと思う。
このなんだかよくわからないけど染みるプロレスの歌で、あの頃のAKBがほんとに終わる気がする。
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二人セゾン〜What made you do that?
欅坂46の3rdシングル「二人セゾン」は追憶の曲であり、希望の曲でもある。
恋人を季節に例えたその歌詞は、冬という一年の締めくくりの季節に聴くのに相応しい内容だ。
一番の歌詞に出てくる表現は秋元康としてはよく見るような表現も多いと思うが、キモはやはり二番だろう。
"What made you do that?"
(なんであんなことしたの…?)
この一節以降の展開の妙である。
"花の無い桜を見上げて
満開の日を想ったことはあったか?
想像しなきゃ 夢は見られない 心の窓"
パフォーマンスの際にセンターの平手友梨奈が巧みなソロダンスを見せつけるこの部分の歌詞は、特に素晴らしい。
冬の毎日の寒さから、春のあの暖かさというのはなかなか想像に難いのだけれど、確かに毎年春は訪れる。季節というものの神秘性すら感じられる。
春夏秋冬を謳った名曲。