Luvit Tex Take Mix

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Million Brazilians - "Red Rose and Obsidian" (Lullabies For Insomniacs)

不器用に生きる意味探して紙ふぶきからひとつ探るように季節が変遷していく中、エクスペリメンタルな音楽のシーンも確実に変わってきている。2010年代のトレンドであるアンビエントニューエイジといった要素は牧歌的でミステリアスなものから霊的で秘境めいた世界へと洗練され、確実に世界観は移り変わってきているようだ。

Million Braziliansは、カセットシーンを追う人間にとっては馴染みの深いトライバル・パーカッション奏者、Corum参加のポートランドのグループで、2006年から活動しており、Corum自身も関わりの深いPsychic Soundsを中心に作品を発表している。その音楽は、米地下シーンを代表する名レーベル、Mississippi Recordsの創設者、Eric Issacsonに“Exotica avant-garde mystical music that is impossible to classify’と言わしめるほど。

「Qujila」(くじら)として現在も活動している杉林恭雄による「The Mask Of The Imperial Family」(Mimic Records)の再発やSUGAI KENの作品も発表している、日本のシーンとも関わりの深いオランダの新鋭レーベル、Lullabies For Insomniacsより発表された本作「Red Rose and Obsidian」は、米・メイン州にて録音され、Big BloodのCaleb Mulkerinがエンジニアを務めており、ライセンス関係はどうなのか不明だが、ジャケット・アートワークはマイルス・デイヴィスジミ・ヘンドリックスを手掛けたことでも知られるカバー・アートの異端児、Mati Klarweinのものを使用している。

※神話的かつ魅力的なこの録音は、メイン州の険しい海岸線に触発されており、揺れる山々を漂うようにサクソフォンが悲鳴を上げ、不安定な旋律を挟んで来る。エレクトロニック仕立てのオーガニック・サウンドから放たれる瞬間的なホイッスルが宇宙的なフルートと出会い、突然変異したロック・リズムを完成させている。聴衆をスピリチュアリティの幽霊が跋扈する異国の世界へと導くSuzanne Stoneの激しいヴォーカルも素晴らしい。

※独自の目線でバレアリックやアンビエントを追求する気鋭レーベル、 Music From Memory(Gigi MasinやRoberto Musciなどの発掘リリースも非常に有名)やZanzibar ChanelのメンバーやAndras Foxも名を連ねる豪州のレーベル、Superconscious Recordsでもご用達の技師、Wouter Brandenburgによるマスタリングも秀逸で、ニューエイジ的な世界観の緻密な描写に一役買っている。

※Million Brazilians史上、最も壮大かつ霊性に満ちた作品とも言えるだろう。今年の下半期を代表するに相応しい上質な作品だ。

Toby Fox - "UNDERTALE Vinyl Soundtrack"

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* ”UNDERTALE” とは、インディビデオゲームクリエイターのToby Foxが、ほとんど一人でつくりあげた、コンピュータRPGだ。最初はPC用Steam版が英語版(ファンメイド日本語版も後につくられた)だけだったが、今年の8月にようやく、公式日本語版および、コンシューマ(PS4/Vita)版としても配信された。

 

* iam8bitより、ゲームリリース2周年&日本語版リリースを記念した日本仕様アナログレコード盤も来年でるみたいだ。

www.iam8bit.jp

 

* 音楽も優れている。基本的には画面の世界観に合わせたchiptuneサウンドだが、ポストクラシカル的なピアノ曲、Boss戦での派手なシンセオーケストラ曲やドリルンベース、ヘヴィメタル的なサウンドと多彩だ。様々なゲーム音楽に影響を受けていると思うが、特にMOTHER2的なジャンルのまたぎ方をしている。2ちゃんねるゲーム音楽板で開催されている「みんなで決めるゲーム音楽ベスト100」第10回において、当ゲームの楽曲が多数上位にはいった。

 

* ゲームをプレイしないと印象が異なるだろうが、筆者は主題ともいうべき楽曲が、とあるステージの再会とともに再びアレンジを変えて登場する編曲は見事だと思った。アコースティックギターを基本として徐々に哀愁的なメロディを広げ、ゲーム内の様々な配置とともに、プレイヤーの心象へ特別なイメージを与えると思う。

 

* 音楽を聞いてほしいというより、ゲームをプレイして、この特別な体験をしてほしい。980円だ。

 

store.steampowered.com

 

 

 

 

Hieroglyphic Being, Sarathy Korwar & Shabaka Hutchings - A​.​R​.​E. Project

シカゴのアシッドを世に知らしめた伝説的エレクトロニック・ミュージック御大にして、ハウス~テクノ、インダストリアル、アヴァンジャズにノイズまでプレイするDJ、Hieroglyphic Being(ハイエログリフィック・ビーイング)と、UKジャズ新世代を代表するドラマーで、Ninja Tuneにも名を連ねているSarathy Korwar(サラシー・コルワル)、Jonny Greenwoodや Yussef Kamaalの作品にも参加しているロンドンのテナー・サックス奏者で、英ジャズ・グループ、Sons of Kemetのメンバー、Shabaka Hutchings(シャバカ・ハッチングス)の三名によるプロジェクト。

本作は、ロンドンのスタジオ、Lightship95にて録音された100%即興ライブ・セッションから四つのトラックを抜粋し、構築された作品となっている。ソレは2セッションに分かれ、二時間半に渡って繰り広げられたという。スピリチュアル・ジャズをも思い起こす霊性溢れる演奏が印象的。非常に官能的なホーン・セクション、土着のノリを体得したパーカッションの躍動に、ハイエログリフィック・ビーイングが繰り操るエレクトロニクスがダイナミックに覆いかぶさり、限りなくドープな雰囲気が生み出されている。JlinとLAビートが融合したような近未来予想図的なサウンドデザインは現代ジャズのモードにもアクセスするレフトフィールドの新境地とも言えよう。オリジナルのセッションを90分間に渡って、こちらのチャンネルで視聴することが出来る。