科学と編集、そして

元・生命科学研究者、今は編集者。サイエンスや出版、趣味のランニングなどについて書きます。

英検1級二次試験の受験体験記(2018年11月11日)

 

2018年11月11日、まずまずの晴天のなか、英検1級の二次試験を受験してきました。

すでに英検1級の勉強方法については数多くの書籍やブログ記事などがありますので、本記事の主眼は「受験体験記」として、できる限り当日の手順のイメージがわくように書いていきたいと思います。

前日までに何を準備したか

英検1級の二次試験はA日程・B日程の2つの日程に分かれています。

www.eiken.or.jp

今回の受験はB日程でしたので、合格発表から3週間程度の準備期間がありました。

その間に行ったのは、以下のこと。

いまから思い返すと、そもそも発音とか英作文(短い文をひたすら作りまくる練習)をしておくべきだったかな…とも思いましたが、ともかくそんな状態で本番に臨みました。

当日その1:会場到着まで

会場となったのは、新宿区の四谷にある日米会話学院という学校でした。

www.nichibei.ac.jp

予備校の先生曰く、かなりの頻度で使われている会場だそうです。

最寄り駅は四ツ谷駅として案内されていましたが、住んでいる場所の都合上、曙橋駅から歩いていきました。

集合が14時00分(厳守)だったところを、13時半くらいに到着するように向かったところ、道中で同じ受験生と思しき方は1名くらいしか見かけませんでした。あとから思い返すと、同会場は1級のみに使われていたようで、他の級に比べての受験者数の少なさを考えれば、そんなものなんでしょう。

もちろん、会場の前の道路では、英検対策予備校の方が勧誘のチラシを配っていました(笑)。

 

校舎が移転したらしく、かなりこぢんまりとした玄関を通るとすぐ脇に受付の机があり、そこで「受験者票 兼 携帯電話を入れる袋」的な紐付きの袋に、携帯電話の電源を切った状態で入れることを求められました。

集合時間前に着いたとしても容赦なく電源を切ることを求められるので、電子機器を使った練習などは、会場に付く前に終わらせなければいけません。

当日その2:受験者控室と、面接室前での待機

会場に入ると、もっと早い時間に到着していたであろう受験者で満杯の控室の横を通りながら、自分の控室へと案内されました。

おそらくは時間ギリギリに到着すると、試験もかなり終わりの方となるため、待ち時間も長いのではないか、と思われます。

私が案内された部屋には14人の受験者がいました。年代は30代〜50代が多めの印象、すべて男性でした(男性と女性が分けて案内されていたかどうかは不明ですが、当日は女性の受験者らしき方をみかけませんでした)。

机の上に置かれているのは、面接の手順を解説した紙と、面接時に面接官が点数を記入するマークシート。後者に、自分の氏名と受験地番号、個人番号などを記入して、あとはひたすらひたすら待つばかりです。

私の場合、13時40分ころに控室に到着し、その後呼ばれたのは14時40分頃でしたので、正味1時間ほどの待ち時間がありました。

スマホはもちろんのこと、すべての電子機器は使用できませんので、なにか勉強するとしたら紙媒体の持参が必須です

周りを見回すと、やはり前述の面接対策本を見ている方が多かったですね。『英検1級 面接大特訓』のほうが多かったでしょうか。

私はスピーチのメモをまとめたノートに、面接本のスピーチ原稿を写経していました。何もやらないよりは落ち着くかなと思い…。

とはいっても緊張のため、あとは会場到着までにコーヒーを飲んでいたため、待ち時間に2回トイレへと立ちました。トイレに行くときは、「受験者票 兼 携帯電話を入れる袋」的な紐付きの袋を机に置いていかないといけません。当然ながら、他の受験者が「こんなテーマがあったよ!」って発信したのを見るのを防ぐためですよね。

 

やがて自分の順番が近づくと、面接室前の廊下に並べてある椅子へと誘導されます。椅子は2つなので、待ち時間は長くて20分弱です。

面接の手順の紙には「面接カードを用意して待て」と書かれていたものの、係員の方に尋ねると「本人確認票(1次試験のときにハンコを押してもらった顔写真のついているハガキ)」と「二次試験の受験票」も必要だ、といわれたので、あわててカバンから取り出したり。

そんなことをしている間に、まずは係員が「面接カード」「本人確認票」「二次試験の受験票」を渡すようにもとめてきますのでそれを渡します。

その後、「本人確認票」「二次試験の受験票」が返却されますので、カバンにしまってから面接室へと入りました。

当日その3:面接本番!

私を担当してくださった面接官は、日本人(大杉漣に似た50代くらいの男性)とネイティブスピーカー(レオナルド・ディカプリオに似た30代くらいの男性、発音から考えるとおそらく米国出身)でした。

Good afternoon! と挨拶をしながら室内へと入ります。ネイティブの方は笑顔、一方で日本人の方は淡々としながらも柔和な表情で、そこまでの圧力は感じませんでした。

進行自体は日本人の面接官が中心となって進めてくださりますが、このあたりは面接本にも多く書かれていますので詳細は割愛。

アイスブレイクの質問は「Please tell us a little about yourself.」だったので、まずは今やっている仕事(科学系の出版社に勤めています)、英語勉強の動機(海外の執筆者やエージェントとのやりとりで英語を使うので)を、おそらく40秒くらいで話したところ、日本人の方より(もう終わり…?)的な表情で見られたので、あわてて休日の過ごし方(家の近所をランニングします、10 kmか15 kmくらい)を話しました。

すると「どれくらいの時間走るの?」って聞かれたので「10 kmなら50分か55分くらい」と答えたところ、外国人の方(おそらくランニング未経験者)が「それって早いの?」と日本人の方に聞き、「まあまあ…かな」と返ってきたため、おそらく日本人の方は共通の趣味があるのだ…などとホッとしました。

トピックスが書かれているカードはかなりきつい黄色の厚紙、サイズはA4程度でした。

5つのトピックスのうち「シリアスジャーナリズムは過去のものか」と「バイオ燃料の利点は欠点を上回るか」との間で迷い、後者の「バイオ燃料の利点は欠点を上回るか」を選びました。

他のトピックの内容はほとんど覚えていませんが、面接対策本にあったテーマがそのまま出されることはなく、話題が特化しているな…という印象は受けました。

 

スピーチでは「利点が欠点を上回る」との立場から、「生物なので増やすことができ枯渇しにくい」「太陽光や風力と違いstableな供給源である」利点が、「遺伝子組み換え生物が流出する可能性を指摘する人もいる」欠点を上回る、と話しました。

スピーチの骨格を話すだけでかなりいっぱいいっぱいで、サポートする内容をそこまで盛り込めなかったため、Q&Aの最初は「1つ目のポイントについてもうちょっと詳しく教えて」という内容でした。

Q&Aの最中も、2人の面接官が「うんうん」と頷いたりしてくれたので、まあ最低限のコミュニケーションは果たせたのではないかと…ただ、発音とか文法、語彙はひどいものだったと思います。

それでも、できる限り大きな声で話すことだけは心がけていました。

当日その4:面接終了〜退出まで

Q&Aの4分の終了を告げるタイマーの音がなったら、もちろん次の質問が飛んでくることはありませんが、それでも面接室を出るまでが試験ですので、最後の最後まで気が抜けません(笑)。

日本人の方の指示に従いトピックスのカードを裏返し、「Thank you, have a nice day!」と言いながら、面接室を出ました。

出るときについお辞儀をしましたが、まあご愛嬌…。

スマートフォンを袋からいつ出していいのかははっきりとしたことはわかりませんが、出口のドアに袋を捨てるようのゴミ袋がかかっていましたので、そこまではスマホは使わないのが無難なのではないでしょうか。

どっと疲れが出てきたので、帰りは市ヶ谷駅まで歩き、駅前の喫茶店でパンとコーヒーをいただいてから、帰途に付きました。

余談:なぜ英検1級を受けたか

実は私、2009年〜2010年にかけて英検1級には挑戦したことがあるものの、その際は二次試験に2回連続で失敗しています。

とくに2回目の結果はショックで、インプロンプトスピーチのトピックが自分の興味ど真ん中(政府はより科学研究に予算を費やすべきか?)だったにもかかわらず、100点中52点((現在とは採点基準が異なり、スピーチ30点・インタラクション30点・語彙文法20点・発音20点で不合格でした(合格ラインは60点)。

なかでも語彙文法と発音の点数が悪かったということもあり、長期的な英語力の向上が必要だ…などと思いながら、一次試験免除での残り2回の受験機会も放棄し、その後もついに挑戦することはありませんでした。

2011年4月から出版社で働いているものの、最近までは仕事で英語を使う機会といえば「(日本で行われる)学会で英語セッションを聞くとき」くらいでした。

しかしここ最近、外国人研究者とのやりとりや(場合により)インタビュー取材を行い、また願わくは海外出張の機会を見据えながら、自らの英語力(特にスピーキング力)を反省し、英検を受験することを決意。

今回の結果は発表までどうなるかはわかりませんが、今度こそはしっかりとスピーキング力を鍛えて、4回あるチャンスをフルに活かしてなんとか合格までこぎつけたいと思います。

「Anki」導入と英単語取り込みのメモ(英検1級関連アプリ)

最近読んだ『Learn Better』という書籍で、「Anki」という暗記用アプリケーションがあることを知りました。

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

Anki - powerful, intelligent flashcards

Ankiというアプリ名から想像できるとおり、暗記に特化したアプリケーションです。よくある暗記カード(flashcard)の形式で、それらを「覚えた」「覚えていない」をいくつかの段階で評価してくれ、いわゆる忘却曲線でいうところの「ここで思い出せばまた記憶が定着する!」というタイミングで出し直してくれる、という代物です。

かなり高機能なはずで、詳しい説明は日本語版マニュアルに書かれているのですが、まだ単純な機能しか使いこなせていません……。

Anki日本語マニュアル Wiki*

私事ながら英検1級を目指していまして、当然ながら高い語彙力も前提となるわけですが、その強化に使えないか?ということで、使い始めることにしました。

ただ使用をはじめるまでのハードルは比較的高く、何よりもまず暗記するための「カード」を準備しないといけません。

直近に受けた過去問や、使用している語彙問題の問題集から手作業で登録してはいるのですが、やりはじめると網羅性なんかは気になってきて、英単語アプリなどから取り込めないか?という発想になりました。

そんななか検索して出会ったページをいくつかご紹介します。

なおMac OS XiOSを前提とした記事になりますので、あらかじめご了承ください。

Ankiで英単語一覧を取り込む「詳細な」説明 - えいらく

CSVファイルなどを用意したあとにどのように取り込むのか、そしてどんなカスタマイズが可能なのかを詳細に紹介。

note.mu

英検1級の対策ができる書籍は、準1級までのそれと比べて相当少ないのですが(受験者数が少ないためでしょう)、『でる順パス単』という書籍はそのなかでもっとも知名度の高いものの1つです。

上記記事の目的はそのiOSアプリ版(mikan)のファイルから、単語リストに相当する部分を抜き出してしまい、Ankiに取り込もうというもの。

ipaファイルの拡張子をzipに変更し、展開後、内包された.appの「パッケージを表示」し、さらに内部にあるデータベースファイルを「DB Browser for SQLite」を用いてcsvに変換する手順が解説されています。

アプリの内容をいじっていいのか…と思わなくもないのですが、少なくとも個人的に使う以上は問題ないでしょう。

【Tips】Apple Configurator 2を利用してiOSアプリをバックアップする方法 | ソフトアンテナブログ

2つめの記事ではipaファイルを展開する前提でしたが、iTunesのバージョンアップにより、容易にipaファイルを見つけられないようになりました。

それを解決する方法として、Apple Configurator 2というApple社の公式アプリケーションを使用し、App Storeからipaファイルをダウンロードする方法を紹介しています。

 

以上をふまえ、

  1. iOSアプリのipaファイルを準備し、
  2. そのipaファイルに内包される英単語リストをCSVに変換、
  3. CSVの対応する列を指定しAnkiに取り込む

という作業を経ることで、リストの作成に成功しました。

上記の記事ではパス単mikanからの抽出方法が紹介されていますが、他のアプリでもいずれ試してみようと思います。

まあ、本当に大変なのは、このあとの暗記そのものの過程なのでしょうけどね…

ノーベル「医学生理学賞」か「生理学・医学賞」か?

日本時間の10月1日(月)18時30分、2018年のノーベル生理学・医学賞が発表されました。

www.nobelprize.org

今年はがん免疫療法にかかわる2つの超重要分子であるCTLA-4とPD-1の発見により、Japes P Alison博士と本庶佑先生に贈られることに。

おめでとうございます!

 

さて科学にまつわる表現に日夜向かっている者として毎年気になるのが、ノーベル生理学・医学賞の日本語表記について。

今までの私、日本のメディアの多くは、「医学生理学賞」という表記を好んでいたように感じておりました。

しかしながら英語の原表記「Nobel Prize in Physiology or Medicine」を訳すと「生理学・医学賞」の順になるはずなので、(ナカグロ「・」の有無は抜きにしても)医学が先にくる表記をみるにつけ「別に間違いではないけど、なぜ医学を先にするかな」と思うのです。

そんななか、見つけたツイートがこちら。

 今日のエントリで言いたいことはすべてここに集約されているので、これ以上付け加えることもないのですが…せっかくなので、「好んでいたように感じて」と書いたのが本当なのか、少しばかり調べてみます。

まずはテレビから(チャンネル番号順)。

NHK…医学・生理学賞

ノーベル医学・生理学賞に本庶佑さん 京大特別教授 | NHKニュース

日本テレビ…生理学・医学賞

ノーベル生理学・医学賞に本庶京大特別教授|日テレNEWS24

テレビ朝日…生理学医学賞

本庶佑氏が喜びの会見 免疫学の権威にノーベル賞|テレ朝news

TBS…医学生理学賞

ノーベル医学生理学賞の本庶佑さん、喜び語る TBS NEWS

テレビ東京…(23時45分時点でWeb記事見つからず)

フジテレビ…医学・生理学賞

www.fnn-news.com: ノーベル医学・生理学...

続いて新聞(全国紙、順不同)。

朝日新聞医学生理学賞

本庶さん「チャンスを若い人に」 基礎研究の大切さ力説:朝日新聞デジタル

読売新聞…生理学・医学賞

ノーベル賞本庶氏「多くの患者救う努力重ねる」 : 科学・IT : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

毎日新聞医学生理学賞

ノーベル賞:本庶氏、新たながん治療に貢献 医学生理学賞 - 毎日新聞

日本経済新聞…生理学・医学賞

ノーベル生理学・医学賞に本庶氏 がん免疫療法開発 :日本経済新聞

産経新聞…医学・生理学賞

免疫のブレーキ役発見、革新的がん治療に道筋 本庶佑氏にノーベル医学・生理学賞(1/2ページ) - 産経ニュース

 というわけで調べたメジャーなメディアな中では、本家と同じ「生理学→医学」の順の表記が4社、逆の「医学→生理学」の順の表記が6社でした。

もちろん今回は検索して最初に見つけた記事を適当に選んでいるだけですので、必ずしもその会社の方針ではないかもしれないことを付記しておきます。

話が前後してしまい恐縮ですが、賞の名称の「Physiology of Medicine」は、ノーベル氏の遺言の表記に則っているもので、選考委員会が勝手につけたなどというものではないようです。

www.nobelprize.org

The interest is to be divided into five equal parts and distributed as follows: one part to the person who made the most important discovery or invention in the field of physics; one part to the person who made the most important chemical discovery or improvement; one part to the person who made the most important discovery within the domain of physiology or medicine; one part to the person who, in the field of literature, produced the most outstanding work in an idealistic direction; and one part to the person who has done the most or best to advance fellowship among nations, the abolition or reduction of standing armies, and the establishment and promotion of peace congresses

くり返しになりますが、この順番で書くのが正しい表記だ!などと主張するつもりは毛頭ございません。

ただ自分のこだわりと(結果としてかもしれませんが)同じ表記を使用している記事をみかけたとき、少しばかりの幸せを感じるのです。