✿Swag✿

個人的な思想の塊。

胸中phlegmatic心情

どうせまた数分後には眠ってしまう。

だから書けるならいま。書いておかねば!

 

今まで貞操を守ってきたのに気を抜いて

この度"インフルエンザA型"デビューしました🙌

 

ヒャッホー!とかv(。・ω・。)ィェィ♪とか

色々やってみるものの、これは完全に病。

白目。

 

物の見事に数時間と続かない体力。

すぐに気を失う様に眠ってしまう。

 

思えば先週、多分頂いたとすれば金曜の

娘達を耳鼻科へ連れて行った時ではないか。

 

私は持病の難病があるので出来れば必要以上

出歩かずにゆっくり過ごしたい人間である。

他所様のように免疫力もなければ抵抗力も

ない、菌には弱い人間なのである。

 

しかし、母親なのでそうも言ってはおれず

自分に用はなくとも、特に三女を授かってからは、やたらと病院へ借り出される。

 

毎度出かけると丁寧に手洗いもするのだが

やっと自分で用を足せるようになった三女(多動)が行く先々でトイレに突入する。

 

本当にしたいのか、それとも

「ちゃんとトイレって言えるの、えらいね」

と褒めて欲しいのかは解らぬがとにかくトイレとみると突入する。

 

そこいら中をベタベタと触るので、

ほら、ちゃんと手を洗って!とか何とか

指導ばかりをしていて、自分の手を洗うのを

忘れていた事が原因だろう。

 

家に戻り、暫くしたら、物凄く部屋が乾燥している気がした。

 

そんなわけはない。ここは古民家。

放っておいても気づけば柱にキノコが生える

湿度は最高潮の家である。

なんかやたらと暑い。


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暑いのでアイスコーヒーにしました

等と言っていたら、周りが一斉に

「そんな氷盛り沢山に入れる程、暑くない」

と言う。

 

え、そうなの?暑くない?なんか今日

すっごい乾燥してない?

 

湿度計をみると安定の60%。

我が家では安定の「カビ注意」指標。

 

あれ……。私だけか…。

涼しげに氷をカランカランと鳴らし軽く一杯

その後すぐに風呂へ。

 

風呂へ行って異変に気付く。

これだけ蒸気がある場所でも、何故か呼吸が

乾燥しているのだ。風邪でもないのに痰が絡む。

 

これは宜しくない気配。

ちょっとゆっくり温もって汗出し切るか。

そう思い、汗出し用のバスソルト投入。

 

汗、出ない事に、汗。

 

なんならちょっと寒くなってきた気さえする。

なんなの。。

 

風呂から出て、残っていたアイスコーヒーに

口をつけようと思っていたのに震えてきて

それどころではない。

 

なんか寒い!めっちゃ寒い!!

 

何この急激な感じ。

実は朝から熱でもあったのか??

それを忙しさで押したってやつだろうか?

 

風呂での粗熱も削ぎ落ちた頃、体温計を

あててみる。41度。

あ、だめ。見るんじゃなかった。萎える。

 

熱があってもある事を知らなければ

何とでもなる、如何様にも!そんな風にしか

母達は自分自身を守れない。

 

母とは如何なるものか、を、この瞬間に

認識した。世の中のお母さん方の病気の

発見が遅れてしまうのはこの現象であろう。

 

解っていても自分が床に伏せたら……

という現実が全てを煙に巻く。

 

「41度!きっと嘘!この体温計、クソ!」

 

等と思いつつ、夜も更けて行く中、思考が

行ったり来たりする。完全に熱病です。

うなされてます。どうしよう。

 

とりあえず何事もなかった様に解熱剤飲もう。そしたらいつもみたいに朝は気だるさと

共に目が覚め………

 

しかし、痰が気になる。

これ以上無理に出そうとすると喉が割れそう。

 

痰って何?教えてwiki

なんとそんな朦朧とした意識の中で本気で痰の検索をしていた。

人の行動って解らない…www
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今、まさに私自身が、phlegmaticだろ……

そんな突っ込みを入れながら。

 

そもそも私はホルモンの欠陥があるのに

4つのうちの1つとかその4つさえなさそうなのに。

 

冷淡・鈍感・無気力な=痰。

あのクソ野郎というよりも、あの痰野郎!

の方がしっくりくるではないか。

えらい詩的な要素を持ち合わせてるのね。

と、無駄に感心。

 
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そこらでペッペッやってるオッサンは

見た目が悪いだけの問題ではなく、刑法違反

にあたるなんて。

 

田舎のおっさん達、全員お縄です。

 

ひとつ賢くなりながら過ごす解熱剤投下の約2時間後…

 

ちょっと下がって38度。

 

え、全然下がんないじゃん!

すんごいしんどい!!例えようがない辛さ!

何これ!肺炎?風邪なら即解熱だろ!?

バ○ァリン、今、優しさいらねぇから。

朝までに何とかしてくれ。

 

…結局30分も持たずしてまた41度に戻る。

 

この頃から某薬品の優しさは私にではなく

敵に優しさを見せ始める。

 

余りに熱が出ると涙が勝手に流れる。

目ん玉が乾燥しないようにだろうか?

頭が割れるように痛い。

内臓は砂利の上にぶちまけられた様に痛く

ところどころ、小石でひっかかれるようで

「いたた…」と押さえて丸くなる。

 

流石にこれは普通の風邪レベルではない。

もしかしたら持病の急性症状だろうか?

寝ている旦那氏を叩き起す。

「死にそうです……」

 

あまりの体の痛みに寝返りも打てないまま

背を向けた状態で。沢田研二かな?

いいえ、もう、動けないだけです。

 

「んぇー……どしたー?熱あるんかぁ?」

と頭に手を乗せて、ビビる。

「めっちゃ熱いやんけ!」

 

救急も高速飛ばす距離にしか存在しないし

この時間に連れて行って貰うとなると

子供たちをたたき起こして車に乗せる事に…

 

流石にそれは忍びない。

「明日、起きたら風邪薬買ってきてやるから」

 

土曜……全然下がらない、加えて下痢だ、

食欲などない

 

日曜……変化なし、もう水分しか取れない、

身体中痛くてトイレに間に合わず何度か漏らすw

 

そして月曜の今日、病院へ連れて行ってもらう。

 

いつも娘達を診てくれている先生。

「あら、今日はお母さんだけ。」

土日に苦しんだ経緯を話し、いま漸く38度台

という状態だし

「ないとは思うけど、一応インフルのテストするかぁ」

 

数分後

「珍しい!B型はちらほら聞くけどな。

A型じゃわ、今、A型、沖縄で猛威って聞いとるけど、あんたAじゃって!」

 

看護師さん

「お母さん~💦Aは一番しんどいやつー💦

子供さんたち~大丈夫ー!?

旦那さんはもう遅いかもしれんけど…

とりあえずこれー、マスク~、はいー」

 

先生

「旦那さん、災難www

あんたももうあかんかもなー。48時間以内じゃったら何とか対応出来たじゃろうけど、土日挟んどるけぇ出るならそろそろじゃろw」

 

わはははは!わはははは!

 

和気藹々。なんなんすか。

出来たらその輪に混じって笑いたかったが

もう無気力。菌の前に私は無力。

 

私の場合、持病があるので、長引くかもね❤

な感じで解放。

 

吸入するタイプの薬を院内で盛ってもらい

今ようやくの37度台。

身体の痛みは相変わらずで、少し動くにも

ギィギィ音が出そうな程に関節や筋肉が

言う事をきかないままですが、明日には熱も

とれそうです。。

 

お迎えが来たようなので眠ります。

ここ数日、寝る、というより、電源落ちる、そんな感じで気づいたら眠っていますが

皆様もインフルエンザにはお気をつけを❗

(特にA型、生命を落とす勢いできっつい!)

 

こんなに辛いとは。。

早く治します。

 

未来志向

光陰矢の如しとの言葉通り、今年も目の前を時間が慌ただしく過ぎようとしています。


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今日は、twitterで仲良くしてくれている方が呟いた一言から書いておこうかな~と思い、久しぶりの更新です😉💕

 

いつもなら引用で出すのですが、そのお友達、鍵垢さんなので🙏

 

内容は季節柄、来年について・未来について自分の姿を想像するも、その想像が追い付かなくて不安を感じる、といった内容でした。

 

 

上記、私が返信した内容です。

 

これね、これ。本当にそうなのよ。

若い頃には解んなかったの。

 

全くうまくいかない時に、大丈夫だよ、なんて言われると

 

「何が大丈夫なんだよ、大丈夫なわけあるか。こんなまいってんのに、大丈夫なわけねーだろぉ。簡単に言いやがってー」

 

と思っていたし(わしゃ尖ったナイフかw)

 

まだその時じゃないんだって!とか言われると

 

「その時ってなんやねん、いつやねん!」

 

な状態でした。まぁ…若さ故。

 

若さというのは、大した経験もしていないのに勝手に"頑張ってるから随分生きた!"等と思い込んでいるもので…w

 

私にも人並にそう言った時代もあったあった😆

 

それでね、大人になってから、そういう

「札の揃う瞬間」と言うのに何度か立ち会って、ああ、こういう事なんだなぁ…と思った、その何回かの内の1つの話をʚ❤ɞ


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まだ結婚して間もない頃でした。

結婚当初は私も働いていて、まだまだ職人見習であった主人よりも断然私の方がお給料も多く、その頃はまだ良かった。

 

長女を身篭ってからが地獄。

 

私の妊娠生活は不安定な物で、5ヶ月辺りから少し動くと出血する日々で、仕事も辞めざるを得なくなってしまいました。

 

となると………

生活が困窮するのは間違いない。

 

いやもう、馬鹿みたいに苦しい😲

なんせそれなりに都会の駅近に戸建の賃貸!

お家賃なんと24万也。

 

引っ越そうにもその引っ越し代さえ捻出できない。誰かに借りて引っ越したところで、その分の返済も乗っかる、更に最終月の家賃と修繕費の請求も来るだろう……もうね、借金地獄。自転車操業

身動きが取れないとこまで落ち込みました。

 

何ともなんないっっ😣

 

更になんと、こんな事は書きたかぁないけど、当時はまだ若かった遊びたい盛りの若い主人、愛人を作っておられまして。。

 

なんでこんなに金がないのに愛人なんて!

 

と思ったりでしたが、まぁそんなのを選んだ自分にも非があり、でもきっとこう…愛されない自分にも何かしら原因があるのだ

 

今が1番辛い時❗

しかし子供だけは、生まれてくる我が子だけは泣かせたくない❗

 

そんなこんなで何度も話し合いました。

勿論未来について。

 

話し合ったとこで明日の飯なんかに代わるわけじゃないけど、でも❗

 

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ある晩、夫婦間でひとつの答が出ました。

離婚する、という事。

 

籍だけ抜けば、連名という形は逃れられるから、それが出た答でした。

 

子供も生まれて間もないのに、せっかく入れた籍を抜き、事実婚という形か……

 

夜もモヤモヤして眠れませんでした。

乳さえ離れてくれれば、だとかそんな思いで過ごす中。

 

あちらも深夜まで及ぶ話合いに正直疲れが見え隠れ😣

 

翌日の昼過ぎ。

前日の話し合いの方向で進めることを了承します、と告げようと可愛くキョロンとした目でこちらを見つめてくる我が子の顔を眺めながら仕事中の主人に電話しようとしたその時

 

着信が。

主人からでした。

「今、用事あって外に出たんやけど、やってもうてな……」

「ふぇ…やったって、何を!?」

「え……事故……」

 

マジで…!!!!??!!

もう言葉がでません。この金のない時に。

車の修理費だとか、相手からの云々だとか…

 

実際にはそっちよりも怪我の心配をすべき事なんですが、もう、本当に、自分の乳も出ない程、食べられないような生活。

 

「…お金はどうすんの…怪我してんなら病院行かなきゃだけど、お金どうしよう……。

てか相手は?相手大丈夫なの………」

 

「ちょっと、とりあえず、今の今やし、場所移動して連絡するわ」

 

そう言ってすぐ切れ、再度の着信。

その間に感じる永遠の様な時間。

 

もうダメだ、本当にごめんね、と子どもの顔を見ながら、謝りながら死にたくなる、そんな時間。

 

「すまんな。いや、まあ金の事は大丈夫やから。完全に相t……」

 

ガシャーーン

「え」

「え」

「え、何の音…」

「すまん、後で!」

「え」

ツーツーツーツー…………

 

切りやがった!なんなん!気になる!

 

暫くして、かかってきた電話の内容に驚愕しました。

 

事故にあった主人、とりあえず近くのコンビニ駐車場に場所移動、移動して私に電話している最中、そのコンビニに物販搬入のトラックが入ってきてトラックの操作ミスにより、我が家の車の上に乗る

 

等という………www

 

当然うちの車、死亡、ナームー。

 

一発目の事故は止まっている主人の車に突っ込んできたらしく、二発目は上記の通り。

 

特に後発の事故はお相手も仕事中の事故であり、これを有耶無耶にするとコンビニ自体のブランドも云々…

 

という訳で、先発後発から計200万が転がり込むという😵

 

この日のこの時点ではそのお金の話も解らなかったので、主人が家に帰ってきてからは

「明日からは車じゃなくて自転車で…」とか

「まぁ…酷い怪我なくて…ああ、怪我してた方がお金の面では良かったのか…( ꒪⌓꒪)」とか

とにかく暗い表情の暗い食卓で……w

 

そんな中、私が場の雰囲気を変えるために一言いったのです。

 

「アレだね…アレだよ…そんだけ死神に追い掛けられるような状況でも死ななかったんだから、当たり年ってやつかもね……。

なんならクジでも買っとけばいいじゃん。

そもそも当たりって事は、いい事も悪い事も当たるわけだから。案外当たるかもね~」

 

なんて、終始、乾いた笑いの食卓でした。

 
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それから数日後。

仕事中の主人からの着信。

 

「いいか、落ち着いて聞けよ。」

 

そう言う主人が一番落ち着いていない。

もうこれ以上、悪い事はいらない。

えー………聞きたくねぇ……。

 

「さっき、こないだの事故の件で話があってなんと200万、振り込まれる事になった」

「は????」

 

大丈夫か、この人は。

あんまりに金がないあまりにおかしくなったのであろうか。

それ程に意味のわからない内容で。

 

「だから200万。何が食べたい?」

「…え?騙してる?」

「騙してない。何が食べたい?」

「………ほんとなら…ほんとなら、この子にマンゴープリン買ってやって、瓶のやつ。離乳食のコーナーにあるから。」

「解った、買って帰る。お前の食べたい物は?」

「……私かぁ…私…おいしいラーメン食べたい」

「もっとあるやろ!爆」

「え……ねぇそれほんとなの?」

実はそれだけじゃない

 

あ!きた!これだ!

これは絶対に悪いヤツ。喜ばしといて地面に叩きつけるヤツ。聞きたくない🙉💦

 

「お前があん時言ったろーが。」

「何を…何か言ったっけ…ごめん」

「なんで謝んねん」

「いや、何か酷いこと言ったのかと…」

「ちゃうわ、当たり年やからクジでもこうたら?って」

「ああ、それ」

「そう言われて買うといてん」

「珍しい…人の言う事、素直に聞くなんて…」

「当たったんやで」

 

は?

「50万。3等。」

「マジで?」

「マジで。合計250万、持って帰るから」

 

なんと!

本当にギリギリだったところ、札が揃うようにパンパンパーン!と。

 

何かに導かれた、とか、それ以外には言いようのない話で。

 

因みに当たったクジは主人を抜いた誕生日の羅列で。どうせ当たるはずないけどまあアイツがそう言ってたから、程度に、だったらしく。

 

そのお金ですぐに引越しをして、ボロボロだった家電も買い替え、何とか建て直しました。

 

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自分自身にはいつでも、自分が存在する理由なんて見えはしないけど、それでも何かに導かれる様に揃う時には揃う物で、それはきっと、その時には見えない将来が待ってくれていて、何かしらその為に生かされている物なのかもなぁ、と、その様に感じます。

 

現状がいくら下がっていても死ねないのは、その先にまだ生きていないといけない理由があり、私の場合はきっと、そこから先の、この時まだ出会っていない、後の二人の子を授かる事だったのだろう、と思います。

 

最後の子を授かった時には出産事故で心肺停止にも陥って、その他にもそれに纏わる病を引きずってしまったけど、それでもまだ死ぬ事は許されず、何かその理由があるのだろう、そう思いながら生きています😉💕

 

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もうすぐ今年も暮れていきますが、来年はいい年にしてやろう!や、今年はろくな事がなかったな…なんて思わずに

 

命があるんだから何かしら生きるべき理由があるんだろうな

 

程度で、もし、革新の時が向こうからやって来ても、動じず騒がずに、そうかぁ来ちゃったかぁ😆💕とそれに怖じ気づかずに迎え入れる勇気と元気を持って来年をお迎え下さい。

 

明日が見えない程辛い時期の方、きっと大丈夫です。必ず、上手くいく時が来る。

その時を見逃さぬ様に、いつも笑顔で前を向いていて下さい。

 

せっかく運気が巡ってきても

「どうせ私なんて…」だとか

「私には恐れ多いわ…」なんて恐縮してたら

すぐすぐ忽ち、せっかく目の前に立ち止まってくれた運を逃す事に成りかねません。

 

今年も1年、よく頑張ったねぇ、自分…

と湯舟で肩でも揉みながら労ってあげてくださいませ💕💕💕💕

 

年の瀬まで時間があるので、また書くかも知れませんがとりあえず皆様、良いお年をʚ❤ɞ

 

不安は捨てて、どうぞ前へ。

 

 

記憶の本棚

あの人は変わってしまった。
人も時間も流動性があり、不変ではないとはいえ、あの人は。

 

小さな頃、私が産まれたばかりの頃は大きな家で暮らしていた。出産を機に夫婦が独立して小さな家を借りて暮らしたのはそれから間もなくの事である。

 

物心がつく頃には一段と高くしつらえられた仏間に、夫婦で一つずつのカラーボックスが置かれ、その上に横長の私専用のカラーボックスが置かれた。仏壇は父方の実家にある為に、当時としては珍しく、我が家には小さな仏壇もなかった。

 

何より夫婦には宗教上の違いもあったし、母は私を無神論者として育てたがった。それぞれの対峙する宗教上の良いとこ取りだけをして生きていくべきだ、そう感じたのであろう。あったのはサイドボードの上のレースマットの上に香水瓶や化粧瓶がたてられた間にいたマリア像、それもまた、アクセサリーをかけておくのにちょうど良く、我が家のマリアは光を受けてはキラキラとしていた。

 

おかげ様で私は願われた通りの無神論者に成長した。神も仏も存在せず、存在するとすれば命あるもの全てが神であり仏である、そういう考えだ。

 


うちの母は免許を持っていなかった。
出かける時は父と一緒か、自転車か、バスか。車の免許を欲しがってはいたが、たまに
「でも、誰かに運んで貰う居心地の良さは捨て難いのよね」
とよく口にした。暇がある、というのが嫌いな人で、車の中でも何かをしてる人だったので、運転に縛られる事や、それしか出来ないという状態が嫌いだったのであろう。

 

私が小学生の頃、足の骨を骨折して保健室の先生が学校から迎えの連絡を入れた時も車の免許がないので、堂々と、自転車で来た。

 

タクシーとかなんかあるだろ……と思ったが

「馬鹿ね、迎えに来て貰えるだけ有難いと思いなさい。あぁ、座布団を忘れたから少しお尻が痛いかも」

彼女にとって誰かが迎えに来てくれるという要素は極めて特別な事であった。時間を与えてくれる、というのは、その時間を自由に使える、という事で。。

 

帰り道の自転車が作る振動は、骨折しているのに下ろさねばならなかった脚に響き、その度に悲鳴が上がり、別の事を考える、や、景色を楽しむ、なんて事は出来ず、少し恨んだ。
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うちにいた夫婦はどちらも本が好きだった。

どこかへ出掛ける際にはどちらも1冊は本をバッグに忍ばせていた。

 

父は"ど"がつく程の潔癖で、ズボラな性格ながらにそれに合わせて綺麗好きだったうちの母は、本を買ってくると丁寧に表紙を消毒し、1枚ずつ紙のカバーを作り装丁した。

 

その内にカバーリングする為の紙を買うのが面倒になったのか、そこら中の紙を使いはじめた。頂き物のお菓子の包装紙、のし、それが入っていたであろう紙袋…。

 

 

私が宿題をしている隣に座って煙草をふかし、たまに長いまつげにかかる煙を払い除けながら夕飯の支度前まで涙目で文章を目で追っていた姿があった。

「山本……」

「…なに?」

「山本…って書いてある」

「あぁ、そうそう、お返ししなきゃね」

カバーリングに熨斗を使っていた為に、母が開いていた本の背表紙にはどーん、と山本、という文字が入っていた。

 

真ん中で仕切られるプリントされた水引はリボンが結われた様で可愛かったが、山本!と主張して来るそれはとてもダサい、鉛筆のお尻を齧りながら、そう思った。

 

「頂きものでこうしておくと、誰から何貰ったのか忘れないし、お返ししたとかしないとか、それも思い出せるからいいのよ」

 

賢い女だと思った。
結婚生活ではその賢さが仇になった訳だが、それはとても良い案だと子供心に思っていた。

 

「山本!って感じの話なの?」

「全然。この山本って人はクスリとも笑わない腹黒くて陰険な奴なんだけど、ことある事にする事だけはきちんとしてくるから、一般的にはいい人、でも本当は嫌なヤツ。

お返しなんかしないでもいんだけど、された以上はしておかないと、言われるの、お父さんでしょ」

 

そんな陰険な山本を連れて、母はその本を読み終わるまで連れ立って外出した。

 

元はショービズ界の人で主婦である事の方が珍しいその風貌と、時間を潰す為に開かれた本の背表紙には"山本"と書いてあり、それはそれで新鋭的なファッションの様に見えた。

 

迎えに来て貰える事を喜んで車に乗り込む母は片手に"坂井"の時もあったし、可愛くて綺麗な花柄の時もあった。

 

「いい本を読みなさい。いい本って別にお堅い本じゃなくてもいいの。美しい日本語で、美しい心の書いてあるものを読みなさい。

裏切ろうが何しようが、美しさってのはその中にあるんだから、この人が何を書きたかったか、何を言いたかったか、それを汲み取るだけの頭は持てってことよ」

 

今で言う"察しろ"という事なのであろう。
相手の持つ何かを察しろ。

 

 

文庫の中には子供でも読めそうな少しファンタジー色の強い優しいものもあって、自分向きではなかったけれどあなたが読めば面白いのかも、解らない字はこれでどうぞ、と辞書もつけて渡された。

 

「お父さんは顔ばっか良くて、頭悪いって有名だったけど、それでもあの人は本を読むから、漢検だけは準二級なのよ。なんの意味があるのか知らないけど…まぁ家柄もあるでしょうね。あの家、お堅いから」

 

と少し馬鹿にしていたが、その家でも通用する様に私を育てたかったには違いない。言われるのは母であり、私だ。

 

 

ある事を境に私達は解散した。
母に馬鹿だと言われ続けた父が原因だったが、やっぱり父はいまだに馬鹿で、でもそれはまだ愛らしくしょうもない類の馬鹿である。考えなしの昭和色の強い

「どうしようもない」タイプのバカ。

 

逆に、才女で美しかった母は向かうところ敵なしで、頭が賢いだけあり、私の知る人間ではなくなってしまった。


彼女は彼女なりに、様々な苦悩の果てに、色んな事を「まぁいいや」としたのだと思う。

 
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私は私で大人になっても代わらずにやっているが、やはり当時の育てられた印象が色濃く根付き、どこかへ出掛ける際には1冊の本を持って出掛ける。

 

……私の場合は電子書籍も持って出かけるので1冊だけ、とはいかないものの。

 

カバーリングもその方法を採用していて、先日それを書いたら、真似をしたい、や、良い方法だと仰った方もいらっしゃった。


人にも時間にも流動性があり、変わっていく日々の中で、忘れてしまう事、忘れたくない事、知らずに忘れてしまう事、忘れるべき事、覚えておきたい事、覚えておくべき事、そういう物が混在し、不変ではない中で、それらをゴミにせず、役立てて大切にして行く方法で、私の日々は彩られる。
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それが誰かに見えずとも、自分の人生に触れてくれた人への感謝として息づいていれば、それで良いのだと思う。

映画のような時代と共に

私の暮らす街には映画館がない。


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2~3年前に市内には大型のショッピングモールが出来、その中には映画館も入ったので何度か訪れた物のそこは最近よく見かける"シネコン"と呼ばれるタイプのシアターで、ロビーから張り巡らされた絨毯の足下は祭儀場よろしく一歩一歩が沈む様にフカフカしていて、私は一向に落ち着かず、特段観たいとする作品が無ければ出向かなかった。


私が映画好きになったのは確かに生まれ育った家庭の環境、というのもあるが、映画館という場所が好き、というのも多大にある。何かがあれば話すより早いと思った両親は映画の力を借りたんだし、小学生も高学年になると独りで故郷の街にあった映画館へ出向いていた。

 

近所の銭湯はロードショー公開中のポスターを2本立てで縦に列べて張り出し、そのポスターを欲しいが為に足繁く銭湯へ通い、番台の皆さんには口伝で

"あの子が来たらもう上映終了して下げたポスターを渡してあげて"

なんて申送りまでしてくれていて。

 

いつもポスターを貰うので子供心に申し訳なくて、フルーツ牛乳とコーヒー牛乳を買って、一本は上がってすぐに、もう一本はがぼっと被って乾かす、宇宙に行けそうなドライヤーで髪の毛を乾かしてから頂く、そんなルールを自分で作っていた。


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たまにマミーの日もあったな、懐かしい。飲み終えた瓶をマス目を描くコンテナに戻す迄が、ポスター入手への対価であった。それから、そのタイプの宇宙に行けそうなドライヤーは今でも自宅で使用している。

 


幼少期に通った映画館に近ければ近い程、居心地が良く、遠のけば居心地が悪い、私にとって映画館とはそういう場所だ。

 

映画館という場所は美しければ良い、音響が良ければ良い、一概にそういうワケでもないようで…。映画自体が主役な事には代わりがないのでここ数年は、便利になったブロードバンドに頼りきりである。


そんな私の大好きだった映画館は街を離れてからもう、とうに閉館したらしいが、今となれば逆に珍しいタイプの映画館で思い出すだけで胸が熱くなる。

 

個人商店の氷屋の前にあったその映画館は色気も素っ気もなく、ロビーと呼ぶには程遠い受付があり、レジカウンターとガラスのショーケースと"雪印アイスクリーム"と書かれた白の大型の冷凍庫しかなかった。電気が入っているのかいないのか、夏になると前の氷屋さんがよく氷の塊をそこに入れにやって来たりもしていた。

 

冷房なんかは当然なかったので受付に立つと、上の方に設置された扇風機が首を振りながら今にも羽根が飛んで向かってきそうにガラガラ、音をたてながら私の髪の毛をいつもぐしゃぐしゃにした。足元は受付も劇場も同じ剥き出しのコンクリート。冬の映画鑑賞はいつも脚の先が冷えて痛くなった。

 

映画鑑賞の友と言えば、いつからかポップコーンが主流となったがドリンクは外の自動販売機だったし、中で売っているガラスケースに並んだお菓子はポッキーやカルケット、ひと口羊羹や個包装のおまんじゅう程度で、夏は冷凍みかん、冬は普通のみかん…とおやつとは言い難い物が並び、まるで盆時の仏壇を眺めている様な気分になったものだ。

 

特筆すべきはお隣が街で老舗の洋菓子店だった為に、バタークリームでコテコテの、胸が焼けるような"ロールケーキ"なる物もあった事、もさもさもさもさ、口に含むとパサパサに乾いたスポンジが水分を奪い、ジュースで流し込もうとすると口腔内が冷えて瞬時にクリームが固まって張りつく。

 

洋菓子と言われるとほわっとしたクリームの感じにもう慣れきっている子ども時代、対し、あのバタークリームのアレじゃないとダメだ、といううちの父、食べ過ぎると胸焼けするからちょこっとだけ頂くのがツウだ、とかなんとか、聞かされていた限りはちょこっとだけ食べて紙袋に入れて持ち帰り、家についたら残りをいつも父に渡し、また映画に行ってたのか、そんな会話があり、紙袋はいつも、脂を吸って、透明で、向こうが透ける、そんな日々。

 

 

館内は今とは違い、椅子は一人一脚、なんて事はなく、足の長い背の高い長椅子で前に鉄で出来た手摺が張り巡らされ、大人になれば足も届くが子供の頃は足をブラブラさせての鑑賞、ドリンクホルダーなんていうお洒落な物はついていないのでジュースの口を開けたら最後まで握りしめているか、長椅子の上に置くかで、それを忘れて身体を動かそう物ならたちまち地面に落下、カラカランと上映中にコンクリートの上にぶちまけられた。

 

そんな状態なので人気の作品は立ち見が出るのは当たり前で、通路に人がいっぱいになってしまうといつも座るいちばん後ろの席からは見えない事もしばしば。

 

映写機の置いてある場所にはガラスも何もはまっておらずただすこし高い場所にあるだけなので映画のシーンが切り替わる静寂の間にはカラカラカラカラ、音がした。

 

よくある事なのかどうなのか、原理は詳しくないのだけれど、上映中には何度かスクリーンにフィルムの真ん中から穴が開き、火の出る様な状態が映し出され、映画の演出かと思いきや、実際にはフィルムが燃えている、なんて事が何度かあった。

 

そういう時は半券を返され、上映中に次の上映を見に行くという、ゆるーいゆるーい状態で、今のシネコンみたいに
『さぁ今日は映画に行くぞ!』と気合を入れる必要もなく(何故だか私はあの絨毯のせいなのかとても緊張するのである)
「日曜だ!さっき目が覚めた!歯を磨いたらぷらっと行くか!」と草履でまっしぐら、そんな気取らないけれど居心地のよい場所だった。


大人になってあの街にも全く帰らなくなり、結婚してからはとてもアクセスも悪く、閉鎖された空間の、周りは山しかないような場所に住んでいて市内までは高速で約2時間、それでもやっぱり映画は好きなので、と、市内に出向き、市内にある映画館はひとつを覗き、全てで鑑賞した。単館も辛うじて一軒備わっているが毎度毎度、映画の為に高速に乗り、シネコンであれば駐車場も完備されているがその他にも出費があり…となってはやはり気軽に楽しむ、とはいかないものである。

 

朝九時からの上映作品となると、こちらの出発は七時より前に出なければならず、そうなってしまうと子どもたちの学校の準備はもとより、保育園に至ってはまだ門も開いていない。

 

そして数日前、私はとうとう出会ってしまったのである!!

 

ひとつを除いていたそのひとつは市内のわかり易そうでわかり辛い場所にあり、まだまだペーペーのドライバーの私には辿り着ける気がしない!!と避けていた場所であった。

 

が、観たい作品を調べてみると、そこでしか上映されていない事が発覚、主人にどうしても観たい作品だから付き合ってくれないか、とお願いし、同乗して貰って出向く事に。

 

これがまさかの大ヒット!!


まさしく私が探し求めていた様な映画館で、なんと、ドリンクは自動販売機で、スクリーンも大きすぎす、小さくても居心地の良い映画館で、なんと、初めて
"この街で楽しい事"
を見つける運びとなった。

 

 

先日、ベイビー・ドライバーの上映がありお邪魔した際には券売所でご年配の女性3人がキャッキャ言いながらお金を払っておられるのをみると、長く愛されている映画館なのであろうな、というのも納得がいく。

 

今のシネコンだと発券されるチケットも、銀行の待ち時間を打ち出す発券機同等のサイズだが、そこのチケットはチケットというより本当の親指の爪ほどの"券"であり、券売所は昔のデパートの屋上でみた様な電話ボックス大の物が備え付けてあり、もう本当に良い場所を発見した、以外、例えようがない。

 

もしかしたらそこを発見できた事は、私にとって、今年一番良かったことかもしれない。

 

たかが映画。されど映画。
映画館という場所は、いついつにどんな気持ちで、独りで、または誰かと観た、それと同時に主役を引き立てる縁の下の力持ちであり、私の人生にとって必要不可欠な場所であると感じる。

 

次はあそこで何観よう、そう考える、幸せなひと時にこの文を残します😋

香り記念日、独りのドライブ。

彼の車はエンジンをかけるとナビが作動し、今日が何日の何曜で、今日が何の日か迄を教えてくれる。それも、ナビのご機嫌のよい時だけ。

 

私はそれを聞くのが好きだ。なんて事ない1日でもその空間を二人占め出来ている事が好きなのだ。彼は、私がそれを聞くと喜ぶのを知っていて、電話なりメッセージで
"今日はこいつ、久しぶりに話してくれて、〇〇の日だって言ってたよ"
と頼みもしないのに教えてくれる。

その瞬間は、離れていても、あの車の、同じ空間にいる様な気分になる。


私たちはなかなか二人の時間を見つける事が困難で、たまに会える時には二年ぶりにようやく逢えた恋人同士みたいにキスをする。一度くちづけて、言葉を発し、またくちづけを繰り返す。一番近くで笑って、私の髪を指で正し、またくちづける。

 

ここ数日は会えない日が続いた。
声を聞く事も困難で、同じ時間にネットワーク上にいる事も珍しく、なんとか短い単語を繋いで、紡いで、メッセージを残していく。

 

10月も終わろうとする30日、どの街の色もオレンジばかりが目立ち、無表情のかぼちゃが溢れ、どの辺りがハッピーなのか全く解らないけれど騒ぎたい人達がうずうずしている音が聞こえてきそうな程だったので、私は少し街から離れる事にした。

 

ふらっと自分の車でドライブする程度の短い旅だけれど、恋をすると感傷的になりやすい。誰かを好きだという気持ちは、人を強くする代わりにとことん弱くするものだ。

 

世の中は浮かれムードなのに、好きな人の顔さえ見れやしない、ただそれだけで、浮ついた時間から逃れたくなる。

いつも走る方向とは反対へ折れて、出来るだけ静かで、出来るだけ何も無いような場所──。

 

川岸のあちら側の木々から鳥が囀り、水面は静まり返ってギリギリで湯気とも霧とも見分けがつかない白いモヤをかけている。この川の少しいった先にはダムがあり、その隣を沿うように大きなカーブや小さなカーブを描きながら道が続いていく。

 

この歳になって"車の運転"と言われると、もう何年も乗っています、といった風情に映る物の、免許を取ったのはまだ二年前の事だ。

 

都内で暮らしている頃は電車もバスも遅くまで走っていたし、車を持つ事で維持費はかかるし駐車場代だって取られるし、車を持つ事のメリット等見つける方が難しかった。当然乗る予定も無かったので、免許を取るだなんて考えた事もないまま、歳を重ねた。

 

ところが色んな事情が重なり、気づけば私はこんなにも煌びやかさとはかけ離れた日常に、大地に、投げ出されている。

 

何をするにも車がいる土地で、車の免許さえ持っていないと言うとそちらの方が驚きであるようで、色んな方に早く取れ早く取れと急かされ、ようやく、二年前に取得した。その為、私はまだ、初心者に毛が生えたレベルなのである。

 

取得してから二年経ってもやっぱり何車線もある道路は怖いし、高速だって覚束ず、誰かの隣にちょこんと座って、やれ喉が乾いたとか、景色が綺麗だとか、お腹が空かないかとか、運転席の人にちょっかいかけている方が向いていると感じている。

 

今まで色んな人の車に乗せてもらって来たけれど、私は何故か彼の運転がとびきり好きだ。私が助手席に居る時は、私の右手が遊んでしまうのを気にかけて、いつも握ってくれている。

 

よほど狭い道や急なカーブにならない限り、その手は解かれる事は無い。私では入るのが難しいような狭い道でも片手ですんなり車の頭を差し入れる。急なカーブでも滑らかでふわぁ~っと漂うような運転をして、まるでピアノ奏者を見ているような気分になる。

 

手を離してしまう時は
「ちょっとごめんね」

とわざわざ断りを入れてから離すところも好きだ。小さな気遣いの溢れる運転をする人。


そんな事を考えながら、今日は一人で、運転している。それで少し、彼の運転を意識してブレーキとアクセルの踏み込む加減を緩やかに、ハンドルは滑らかに、美しく。

それを心がける。

 

川岸に車を止めて、何をするというわけでもなく、ただ黙って水面を見ながら、買っておいた珈琲を飲む。11月も近くなると水辺は冷えて、時折、首をすくめる。ホットにすれば良かったのに、車の中が暖かいからアイスにしたのは大誤算。彼なら君らしいって笑うだろう。

 

こんなに好きなのに。
こんなに、好きなのに。

 

お互いに、それぞれの、帰る家がある。

 

空気は静かに澄んでいて、狂気を感じる程で、吐く息が少し、白む。

 

このままじゃいられないよね。
ずっとこのまんまって訳にはいかないんだよ。

だいたい最後はその会話。
どっかの鳥が笑うように鳴く。

 

多くの恋愛は希望のあるもので、行き着くべきところに向かうのに、この恋はいつもサヨナラをどこかに含む、そんな恋だ。

 

あの車の、あの空間に、私がいられるのはいつまでだろう。自分で運転できる様になったんだから、いつまでも乗せてもらう訳にはいかない事も解りながら、今まで交わしたキスの数や、私の仕草の可愛さを堪らなさそうに見つめるあの眼差しを思い出す。

 

思い出さなければいけない位に、二人の距離と時間が遠い。ポケットのスマホが震える。

 

「今日は香りの記念日だって」

私を抱きしめると、顔をみると、いつも嬉しそうに、あぁ、いい香り、と深呼吸する人からの、お知らせ。

 

前回の夜は家についたら私の香りがシャツの袖口についてたとかでクンクンしながらメッセージして来た人。

車の中で急に、あぁ、旅行いきてぇなぁ~もう誰にも邪魔されずに一緒に買い物したり、珈琲飲んだり、時間が有り余るほどあってさ、あぁいいな、旅行、行きたいね

なんて言ってた人。


私達は目的地に着くとも着かずとも言えない時間をいつもドライブしているようだ。離れてしまうであろう関係やキスや指を感じながら。

 

独りのドライブの自由さと、寂しさ。
私の心を、いつも、知っていて。

 

大きな鳥が木立を揺らして飛び立つのを見てから、車のドアを閉める。

 


M-flo loves Yoshika : Let Go - Acoustic Version - YouTube

独りで食べても充分美味しい

図書館に出かけようとしているところ、主人が急に戻ってきた。

 

何も言わずにドリッパーにフィルターをセットし挽いた豆をはかりもせずにザラザラと投げ入れてお湯を注ぐ。その音を遠くで聞きながら私はネックレスの留め具をかけていた。

 

テーブルの上にトンと置かれたカップ。

いつの間にか私の分も入っている。

 

あら、珍しい、私も頂いていいの?と尋ねると、他に誰が?との返事。

 

本当はすぐにでも出掛ける予定だったのだけれど、せっかく淹れて頂いたので私も斜め前の椅子をひいて腰掛ける。

 

私の顔をじーっと主人が眺める。

なあに?そう言いながら珈琲を頂く。

適当に豆を入れたにしては加減のいい味で、あぁ美味しい、の言葉が口をつく。

「俺、お前のきちっと化粧した顔、好きだ」

と唐突に言う。

 

あらそう、ありがとう、と返したあと、ハタと気づき

「ねぇ、普通は化粧してない顔も綺麗だよ、じゃないの?」

と尋ねると吹き出した。

 

「化粧してない顔は見飽きてる…っていうと、彼に失礼か。彼はお前の化粧してない顔なんか見た事ないだろうしな」

 

回数は少ないけれど、彼は私の素顔を知っている。確かに、見飽きた、なんて言われる程ではないけれど。

 

「で?なによ、どうしたの?何で戻ってきたの?仕事の話?私今から図書館に用があるの。頂いたら、出かけるから」

 

その言葉には答えなかった。

 

「用事なんかないよ、一緒に珈琲飲みたかっただけ。顔見に戻ったなんて言うと、お前怒んだろ?」

 

主人は今まで、そんな事をしたことがなかった。自分が戻ったら気を利かせて、あらお戻りになったのねなんて言いながら妻が珈琲をいれてくれる、この人は自分の理想の上でしか生きてこなかった人だ。

 

怒りはしないけど毒でも入ってんじゃないかと心配になるわよね、と肩をすくめて見せた。

 

「お前ひとりに色々と預けて行くのは気が引けるけど、今日は遠方に用事があるから、もうすぐ出るけど。」

 

出るけど?なに?

 

「で、彼との昨日のデートはどうだった?化粧ノリもやたらと良さそうだけど」

 

私はシラッとした態度で答える。

 

「そうね、最高だったわ。あの人、夢見せてくれるし、優しいから」

 

そんな返答をする間、私の目を見つめたまんまだった。

 

珈琲も飲み終えて、私は席を立ち、そのまま図書館に行く為の荷物を車に積んで乗り込んだ。

 

図書館での用事も済ませて、買い物をしながら彼に電話した。

 

昨日の飲み残したワインは呑んだのかとか

教えて貰った本のどの部分で泣いたとか

そんなたわいもない話をしながら、私は夕飯の食材を買い物カゴに投げ込む。

 

あぁ、そういえば、今日の分が足りないからワインも買っておかないと…

 

そう呟いたら彼は

『また呑むの。そんなに強くないのに』

と笑った。

 

そんなに強くもないのに呑むんだから可愛いでしょう?

なんてヘラヘラと甘えてみる。

 

うん、だね、なんてとても嬉しそうな返事をした。

 

私がそんなに強くもないと知ってる人。

小さな事だけれど、私の事を知ってる人。

どうでも良さそうな事を見逃さずにいる人。

 

でもいつも、話終わりの間際には、このまんまでは居られないよね、そういう話になる。

 

家に戻って、子供たちにはカブとチキンのソテーを拵えてやった。

 

彼女たちが食べ終えたのを確認してから、ワイングラスに一杯分を注ぎ、少し深さのある白い食器にベビーリーフとサラダ用の茎が紫色をした水菜を切って盛り付ける。

 

テーブルの上には、テーブルサイズのフライヤーを置き、かぼちゃや白ネギ、ししとうやエンドウなどを溶いた粉に放り込む。

 

フライヤーの油が温まったら、次々と中へ泳がせる。ハチハチハチハチ、小気味好い音が響く。

 

カラリとあがった順に、何も味つけしていないサラダ用の野菜の上に置いていく。油を切る為に天ぷら紙を敷かずとも、生の野菜と落ちた油が絡むのでいつもその様にしている。

 

かぼちゃは栗かぼちゃと呼ばれるだけあって、揚げると中がほくほくモチモチしていて粘りのある甘さがあり、白ネギはネギの鋭利な香りなど捨て去り、噛み締めると透明感のある甘い水分が舌先にのってとても美味しい。

 

ハフハフしながら、ワインで流す。

 

あぁ、美味しい。

片手に文庫本を持ちながら一定のペースを保ちつつ、揚げる、食べる、呑む、を繰り返す。

 

ご飯は大勢で食べた方が美味しいという。

私は疲れたのだ。

誰にも気を使わずに、自由に好きなものを食べられるこの時間、独りでも充分美味しい。

 


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私には好きな人がいて、その話を数日前に知った主人は何日も嫌みったらしく文句を言ったけれど、その話の時に私は言った。

 

仕事が忙しかったとか、なんだとか、10年も全く振り返らずに、待たされる身にもなってみて。蔑ろにされる身にもなってみて。

 

何かに夢中だから、もう片方が疎かになった、何かに夢中だって事は、対象が仕事であろうが趣味であろうが人であろうが、恋をしてるには違いないわ、その間、一切、こちらを振り向こうとも見ようともしなかった。

 

こっちを向いて、何度もそう話しかけたけど、とっても面倒くさそうで、足手纏いみたいに一瞥しただけで私からして見れば、もう私は諦めて新しい人生を歩み始めたのに兵隊に出た人間が舞い戻ってきて、裏切り者だ、俺は国(家族)の為にやってきたのに!

 

そう言ってるのと変わらないわよ、私は私で、生きてたんだから

 

そう説明した。

顔を見るたびに嫌味ばかりを言うので

 

取り返したいんなら少しは惚れさせる努力をすればいい、何でもあわせて貰える時代は終わったのよ、私はよそに恋をしてるから

 

冷たくそう言い放った。

 

私が妻としての務めを果たさずに勝手によその男を好きになった、となれば話は別だが、求められれば与え、あちらの要求には自分を殺してでも従い、する事はしてきたのにも関わらず、私を妻として扱わなかったのは主人の方である。

 

いつも蔑ろにされて、あまりに自分勝手が行き過ぎるともう少し考えて欲しかった、と意見して、その意見に対しても、仕方がないだろ、とか、挙げ句、誰に食わして貰ってんだ等と言い放ち、散々好きな事をしてきた人だ。

 

気づいたら、自分の事も何も話さなくなり、話せなくなり、自分は何のためにここにいるのか、を、問いただす日々になり、最後にはそれさえ考える事も辞めてしまった。

 

私の好きな人は私を愛してくれる。

でも彼にも持ち物がある。私を失いたくないと言いながら、それを手放す事はないだろう。その事には薄々、感づいている。

彼の方は彼の方で先にその手を放したのは奥様の方であり、するならよそでと諭された事情もあるので、異例の

 

お互いの家庭がお互いの存在を知っている

 

という形になるのだが、もしそれらを彼が手放す事になるにしても、それは随分のちの決断となる事だろう。世間一般的にはそれは"狡さ"であるかもしれないが、どうするかは私の決めるところではないので、それならそれで良いと思っている。

 

愛しているからこそだ。

どうしても、好きな人には、甘い。

好きな人がそうするというのなら、私は頷くだろう。

 

彼がいようといまいと、私は長く結婚生活において終止符を打つべきかどうかを考えてきたので、先日の話し合いの際、

 

離婚なら離婚で良いと考えている

 

と主人に申し出た。主人の方はそいつと一緒になるのか、や、男としてのプライドばかりで、私が一言、その気持ちの中に私は出てきますか?と尋ねたところ、今度は打って変わって

 

さみしい思いをさせていた事は自分でも解っていた、や、自分の行いがどれ程酷かったかを私に報告する結果となった。

 

そこで一言、あなたは仕事仕事と仕事のせいになさいますが、手を出していないだけで好きな人はいらっしゃったでしょう?

 

と蜂の一刺し。みるみる表情が変わった。

 

その頃の反省を今報告されましても困ります、

 

そんな気分で一杯だったが他人に取られるとなると手放すには惜しく、そうなってみて初めて妻という存在の意味を知った事になった様だ。

 

しかし、だからと言って、その男と別れろ、解りました、とはいかない。私の気持ちはもうとっくに動いてしまっているのである。

 

誰にも奪われたくないと、手放すのは辛いという主人からの提案は半年間自分は頑張るのでその頑張りをみて、愛だと認識してくれないか、との事だった。

 

そもそもそいつと一緒にならないのに別れる意味あるのか?と言う問いには、根本が理解されていない、と感じたけれど、主人と彼が話した時、彼は

 

"今すぐにとはいきませんが、将来的には一緒になりたいと考えています"

 

と話し、主人は激怒した。

 

隣で聞きながら、激怒する意味がわからない、と思っていたのも確かだ。ならば初めからそれに気づいて大切にしておくべきだった。

 

出来ていないからそれに疲れたのだ。

横柄でも愛してくれる等、そんな物は誰にとっても幻想だ。私はつれない息子の母ではない。またあの子は、等と笑う位置には端からいないのである。

心変わりを許せぬのなら自分の愚行を反省してからにしてくれ、他人に当たり散らすな。

 

じゃあもし…

私が今後10年、全くあなたを見向きもせずに11年目にして急に

心を入れ換えて家族の為に生きて行きます!

と宣言したらあなたどうするの?

おせぇわ!って言わない?

そんなに言うなら21年目からやり直しましょう、それまでは好きにさせて。

 

辛抱強さが足りないわよね?

私に比べて。

 

怒るのは勝手だけど、他人の痛みも理解してからにして。

 

こういったやりとりを他人に話すと

『もっとうまいやり方があるでしょうよ』

と笑われた。

『なんにも言わない、バレずにやってのける、だれも傷つけない、その上で、自分が笑ってられるのは外に支えがあるからなの、そう思ってやってけばいいじゃない。

なんでそんな事を言っちゃうかなぁ~』

 

ああ、そんな物なのか、と、思った。

バレなければいい、と言う事は大抵において悪い事で、言えない事はすべき事ではない、というのが私のやり方で、馬鹿正直と言われようがこればかりは変えようが無い。

 

だれも傷つけないやり方で、なんて、傷付いて来たから踏み出すんでしょうよ、動くんでしょうよ、矛盾してない?

私は傷ついた。傷ついてきた。それなのに、相手の幸せばかりにあわせろとでも言うのであろうか。

 

それに。

そんなやり方は誰に対しても失礼である。

欺くのが世のやり方ならば、余計に、欺かないで良い方法を選びたいものである。

 

絶対に取戻すからその間はそいつと会っていても仕方がない、と躍起になっている人と、手放せない癖に失いたくないという人と。

 

前者は常に目を光らせ、少しの買い物でも5分ごとに電話を入れてくるのだし、後者は私が彼の気持を優先させようと気持をひくとひどく凹む。

 

丁度良い、が、見当たらなくなってしまった。

 

フツフツ、ハチハチ、たまに傷を入れ忘れたししとうが爆ぜる。バチン。

 

今日は静かだ。

独り本を読みながら、その音だけを聞いている。

 

削った岩塩をパラパラとかけ、シャクシャクと噛み砕く。私が欲しかったのは、自由と、ここに寄り添う愛だ。

 

全部を横に置いて秋の夜長に独り、天ぷらを揚げながら食べている、こういう自由な時間だ。

 

もうなんか、どっちでもいいな、と思う。

独りで食べても充分美味しいし、幸せなんだから。

東京めぐり6 さよなら東京

朝。

 

朝まで呑んでしまい、じぇっちんに送って貰った私とヒゲ氏は、とりあえず東京駅の改札まで向かい

『麦の新幹線のチケット貸して。隣が空いてたらラッキーなんだけどね』

………

取ったよ。マジかwwwwwwwww

「うん、愛じゃね?😉💕」

『ピェーーーー❗❗❗』

 

な奇跡を起こすwww

 

とは言え、新幹線の時間は昼の12時前。

まだ少し時間あるし、ウロウロするにも重たい荷物もあるし、寝てないしで

 

「あ!これはマズい!死ぬかもしれないパターンwww」

 

となって、私

 

『よし、数時間のみ、鶯谷に移動すんべか❗』

「ん?鶯谷って何があんの?」

『ホテル❗格安のホテル❗東京からなら10分です👍』

 

そんな事だけは知恵のある私。

 

二時間程度ならシャーウッドのデイユースならば2000円もしない❗

http://www.sherwood.ne.jp/sp/

 

ライブ行く時の着替えに使おうが、少し休もうが、イケナイコトしようが好きに使え❗というやつです😜

 

残り時間ぐっすり爆睡、風呂に入り、化粧を直し、お着替えをして、ヒゲ氏起きろー❗と起こして東京駅へ。

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ああ、楽しかったよね、東京。

新宿で昔、出禁になった店は無くなっていてwあの夜のネオンに

 

『あぁーここが私の生きた街だったんだよ~。ほんと必死に働いて、暮らし守るのに必死こいて、夜にはここで集まって!』

「麦、頑張ったんだね✋なでなで」

泣きそうになった夜がほんの数日前で、自分が生きた街を後にする。

 

残念ながら高円寺には行けなかった。

行けなかったと言うよりも、行く勇気がなかった。

 

でもね。なんかね。

独りだったら全く楽しくなかっただろうけど、寒かったら寒くない?と訪ねてくれたり、歩き疲れてない?と体調心配してくれたり、飲み過ぎ禁止よぉ?と止めてくれたり、

 

それにね、なんかね。

 

デートらしいデートって初めてしたし、帰りの寂しい感じがなくなる位に笑わせてくれたりしたヒゲ氏に大感謝💙💚💛💜❤💗💖

 

勿論、私は好きな人と新幹線に乗った、なんて経験もないわけで。

 

働いていた頃は、週末に一人、ロマンスカーで箱根に逃げてたけども(呼び出し喰らわぬ様に)

 

『ねぇ、ヒゲ氏!あなた、彼女と新幹線乗った事ある?』

「えーーー……あ、んん??ないかも」


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『ラッキーーーー❗😆私が頂くぜ👍

んで私、新幹線の中でご飯の経験もないから~』

「やっちゃう!?駅弁やっちゃう??」

 

ぶちかまそうぜ、駅弁f**k❗


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はい、"駅弁やってます"

 

暇がありゃ「のぅ~のぅのぅ~」とちょっかいかける私wwwめさ楽しい💗

 

東京が遠くに行ってしまうのに、寂しさゼロよ!ダーリン💙💚💛💜❤💗💖

 

あーこれ新婚旅行なら良かったねー二人の。

え?え?二人して草wwwwwwwww

 

「のぅ~。のぅのぅ~」

『なにぃ?』


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じゃーん!!

舟和の!期間限定の!芋ようかんどら焼き、買っといたんだぜ!!!!

 

ファーーーーー!!!やるなぁ~🎵🎵

 

と、やいのやいの。

東京はみるみる離れ、すぐにも新大阪の駅に滑り込む。

 

"家に帰るまでが遠足"とはよく言ったもので。

 

新大阪からのバス停でヒゲ氏とはさようなら。手を振ってくれた時、泣きそうな顔してた。仲良くなった友達と夕方になって離れてしまうのが寂しくなるような。そういう顔。

 

東京でお会いした皆様ありがとうございました💗仲良くして頂いた事に感謝😊

ヒゲ氏もありがとうね💙💚💛💜❤💗💖💘💕💓🖤

 

新大阪からバスが動いて全部に手を振って席についたらLineがひとつ。

 

"またすぐに会いに行くから。待ってて"