俺はまだ東京で消耗している

首都東京に生きる20代男によるブログ

今こそ「神話」を信じる時だ

類は神話を信じて文明を築き上げて来た。すなわち、人々は神という架空の存在を作り上げ、身の回りの事象を神と結び付けることによって、自分たちを納得させてきたのである。「この雷雨は神がお怒っている証である」という風に。

 神話には科学的な根拠は全く見られない。例えば神話の1つでは、聖母マリアは処女のままイエスを出産したと言われているが、現在では誰が考えてもそんなことは不可能であるとわかる。このような、少し考えれば正しくないと思われる神話を、人類はこれまでいくつも積み上げ、それを共有することによって、文明を築き上げてきたのである。

 宗教は神話に基づく。俺は日本の田舎に1990年代に生まれ、東京で生活している。日本人の多くがそうかもしれないが、俺には特に信仰する宗教はない。無宗教である。しかし、日本ひいては他国においては、今でも宗教を信仰する人は多い。彼らは、今でも神話を信じている。人間は、正しいものでなくてもそれを盲目的に信じることが可能な生き物である。

 実は、神話が事実であるかどうかは重要ではない。神話により人々が納得し、それにより安心感を得られたり、共通の神話を信じることによって、人々の結びつきが得られたりするように、神話は人々の力を増幅させる。時に、増幅した力により戦争が引き起こされたりもするほどである。

 神話は、人間の理解が及ばないものに対して、説明をしてくれる道具なのである。例えば、今でも宇宙の果てに何があるのかわかっていないし、人間の意識がどこにあるかもわかっていない。魂の存在なども確認できていない。死後の世界があるかどうかもわかっていない。神話はこのように我々がわからないことに対して、説明をしてくれる。「死んでも魂は残り、生まれ変わっては死に、生まれ変わっては死に、生と死を行き来するものである」というように。神話が説明してくれることによって、我々は安堵の気持ちを得ることができる。神話のおかげで人類は自分たちを納得させ、結びつき、文明を築くことができた。

 今 、これを書いている時刻は、2020年5月9日土曜日である。2020年現在、COVID-19が世界を襲っている。新型のウイルスであり、未知の部分が非常に多い。どこから発症したウイルスであるのか、どうして無症状患者が多いのか、どのようにすれば回復できるのか、多くのことがわからない状態である。人類は、COVID-19を科学的にハックしているが、完全な解析にはまだ時間がかかるであろう。また、ウイルスは変異を起こすため、完全なワクチンができるとも限らない。世界の人々は行動を制限され、気が滅入り、うつ状態に陥る人もいる。このような時、すなわち未知のものに襲われた時こそ、神話を信じるべき時なのである。

 神話は我々を納得させる。例えば、次のように。「COVID-19は、地球環境に悪影響を及ぼす人類に警鐘を鳴らすために神が作り出したウイルスである」「COVID-19は、自らを万物の長と称す慢心した人類の目を覚まさせるためのものである」「COVID-19は、自然界の恐ろしさ、そして生きることの大切さを教えるために作り出されたのだ」このような神話は、なにも科学的根拠はないものであるが、どこか真に迫るところがある。そして、我々はこれらを持って自らを納得させることもできる。それを自らに課された運命だと考えれば、それに耐えることができる。この不安の溢れる時代に、改めて神話に頼ることで、自分を納得させるのも1つの手かも知れない。