※ネタバレあり※
昨日、サカナクションのライブに行ってきた。その熱がまだ身体の芯に残っている。
山口一郎さんの休養期間を経て2年ぶりに開催されたライブ。でもそんなブランクを感じさせないくらいの、強くエネルギーに満ちたライブだった。
今回はSpeaker+という新しいスピーカーを導入したという(毎回ゴツいスピーカーを入れるから勝手に予算を心配してしまう)。だから音への期待は膨らんでた、けど。
開演とともに会場に鳴り響いた雨と稲妻の轟音でもう、一気に引き込まれてしまった。聴こえるとかじゃない。まるで会場内に雨が降りしきってるかのような臨場感。
そこにAme(B)のコーラスが重なっていく。サカナクションの音の世界が広がっていく。荘厳な音に、畏れみたいなものを感じていた。
そして満を持してサカナクションが登場。次に披露したのは私が大好きな陽炎で、テンションがぶち上がって飛んでしまった。
少し中華テイストのアップテンポな曲なのに、サビまでくるとなぜか泣けてきた。泣きながら笑って飛び跳ねてた。
今思い返せば、あれはきっと2年ぶりのツアーに感慨深くなって泣いたというより、ただ大好きな音楽に包まれて高揚感が限界突破したんだと思う。
高揚感で泣くことがあるんだ。
その後はアップテンポな曲のオンパレードでずっと飛んでた。アイデンティティでは大声で歌ったし、ルーキーでお約束のレーザー光線に今回も見惚れてしまった(サカナクションの照明演出は、曲の世界に入り込めるから本当に素晴らしい)。プラトーってインストがめちゃくちゃカッコいい曲だったんだ。あみちゃんのベースに痺れた。
そこからぐっと静かになる。あ、深海に潜ったんだとわかった。
ユリイカでまた泣いた。私は東京には住んでいない。でも日々せわしなく過ごしているうちに、いつのまにかこんなにも長い月日が経っていたのかと感じる瞬間が最近もあった。ユリイカの歌詞は今の私に沁みた。
流線が後に続き、海のさざなみが聴こえてきた。そしてあのイントロが流れたとき、私の心が震える音がした。ああ、これ聴きたかった。もしかしたらサカナクションで一番好きな曲かもしれない、ナイロンの糸だ。
戻りたくても、もう戻れない過去を愛おしむ曲。
この曲にどんな引力があるのか、初めはカロリーメイトのCMで流れたのを一瞬聴いただけだったのに、あれからずっと心を揺さぶられている。
濡れた丸窓の映像がステージの背景に映し出される。窓の向こうに海が見える。さっきまで暑かったのに、心なしか少し肌寒い。ここには1万人いるのに、この世界でたった独りのように感じる。この曲の美しさに触れてまた涙が溢れてしまった。
一緒に行った相方は、何で私がこんなに泣いてるんだろうと隣で不思議に思ってるだろうか。でもいいや。涙を止められないんだから。
セットでもっとも度肝を抜かれたのは、バッハの旋律〜の時だった。はじめはステージが布に囲まれ、大スクリーンになって映像が流れてたんだけど、幾何学模様の映像に合わせて段々真ん中がひし形の形に開いていく。開いていった中に、高く上がったステージで立っているサカナクションのメンバーがいたのであります(全然上手く説明できない)。
どんな仕組みになってるのかわからないけどめちゃくちゃカッコよかった。
メンバーがDJになり、聴き馴染みのある曲がテクノ風にアレンジされて流れる。会場が完全にクラブ化していて、みんなで音楽に乗って揺れるのが楽しかった。
クラブはネイティブダンサーで幕を閉じ、ミュージックからバンド体制に戻った。
ライブで一番映える曲がなにかと聞かれたら、私はミュージックと答える。
音源も大好きだけど、この曲はライブで聴くたびに衝撃が走る。
ミュージックは、ここまで上がるだろう、と予想するテンショングラフのラインを軽々と超えてくる。その遥か先まで到達する。ライブで聴いてこそ、本当の良さを体感できる曲だと思う。
それは今回も変わらず、むしろパワーアップしてるように思えた。アーティストとして、音楽に向き合いつづけるサカナクションの覚悟を感じた気がして、「歌い続けるよ」と歌う山口一郎さんに心の中でおかえりなさいと叫んだ。
そこからショック!、モス、新宝島、忘れられないのと止まることなくボルテージが上がっていった。
サカナクションのライブは、会場と自分の境目が段々なくなっていくような感覚に陥る。境目がぼやけて、自分も音の粒になって溶けていくみたいなイメージ。音楽に陶酔するってこういうことなのかなと思う。
スタンディングで腰が痛いのに、曲が流れると不思議と腕を上げて飛んでしまう。アンコールで再び飛びはねて歌ってあっというまの2時間半だった。
「ずっと歌いたかった曲」と前置きして最後に歌ったのは休止前に出したアルバムの曲だった。シャンディガフをメスライオン色と言い表す一郎さんの感性には、逆立ちしても辿り着けないや。少しまどろむような柔らかい余韻を残してライブは終わった。
いい夜だった。
山口一郎さん、おかえりなさい。またサカナクションの音楽が聞けて本当に嬉しかった。
ここから「turn」して今までとはまた違う新しい音楽を生みだしていくサカナクションが楽しみだ。
5/2(木) 18:30〜 マリンメッセ福岡A館
セットリスト
- Ame(B)
- 陽炎
- アイデンティティ
- ルーキー
- Aoi
- プラトー
- ユリイカ
- 流線
- ナイロンの糸
- ネプトゥーヌス
- さよならはエモーション
- ホーリーダンス
- 『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』
- ネイティブダンサー
- ミュージック
- ショック!
- モス
- 新宝島
- 忘れられないの
アンコール
- 夜の踊り子
- 三日月サンセット
- シャンディガフ