教育現場から見るこれからの脱藩者達
知識を浴びる時代から、多角的に考え、能動的に行動する時代へ
先日とある大学へ訪れたときに感じたことを書きたいと思います。
前職IBM時代もさまざまな大学にお邪魔させて頂きました。
殆どの大学というのは、全ては教授の力量で教育が決まります。
教育方針も教授個人個人が動いていているため、研究室によってレベルが様々です。
しかしながら明確なビジョンの下、学校で一丸となってさまざまな先進的な取り組みをされている大学も中にはあります。
そのなかで起業家を育てるプログラムなど、主体的に学生が考えて動くためのあらゆる支援が整っている大学が増えてきました。
いまの時代は、研究や講義以外に何をするかを考え、行動することが求められてるんだなと感じる設備や教育体制。
中教審でも審議されてる内容ですが、今後、教育はアクティブラーニングに変わっていきます。
多角的に考え、行動する力を養うことですね。
日本の教育は、今までは一方的な知識のシャワーを浴びるような教育でした。
これからは生徒に議論や意見交換、発表などを行わせて能動的に授業に参加し、物事を多角的に考えることが求められます。
格差が広がるだの、色々と騒がれてますが待った無しです。
さらに今後は起業家を醸成するための教育も大学に求められます。
大学の方がこれから何が必要か分かってる、そう思います。
いままさに社会人に必要な力こそ、この多角的に考え、能動的に行動する力です。
優秀な大学に行って、大企業に入って一生安泰という時代はもはや過去の話。テクノロジーの黒船により逆に大企業が不安定な時代に突入しました。
教育→労働→余生を過ごすという画一的な人生が当たり前で、これに疑問を持たない方がほとんどだと思います。
この考えに疑問を持たなければ、ビジネスは破壊されて仕事は奪われていきます。 幕末のごとく。
社会の仕組みやパワーバランスを理解した上で事業を起こせる脱藩者になれるか
この数年はスタートアップがブームで、スタートアップがどんどん力をつけてフラット化するなんて言われてましたが、思いのほか大企業が強いという事実がわかりました。
そして一方で、スタートアップはもろく、簡単に壊れます。
起業家は喧嘩してはいけない領域が3つあると言われています。
1つは法律、2つ目は政治、そして3つ目はお金です。
起業家はこれらの3つを理解せずに突き進むと、必ず痛い目に合います。
社会の仕組みやパワーバランスを理解した上で事業を起こせるかも実は大事で、最近だと学生起業家のサクセスストーリーだけが取り上げられますが、特に海外を見ても成功してる人は殆どがビジネス経験した人たちです。
しかしながらAIやブロックチェーンなどの新しいテクノロジーを使ったビジネスは、既存の大企業でやっていたビジネスの延長では論理が成り立たないので、ビジネス経験が逆に邪魔をするパターンです。
こんなバランス感覚の必要なビジネス領域を乗り越えられるのは、異端児集団、つまりは脱藩者集団を作り上げることが大切です。ここでの脱藩は大企業を辞めるとかではなく、組織や既存のやり方にとらわれず物事を動かそうとすることです。
スタートアップのイベントやデベロッパーのコミュニティに顔を出し、時代が変わったことを肌で感じ、様々なオープンイノベーションに積極的に取り組み沢山の失敗を経験することです。
大企業で待ってても、つぎのテクノロジー領域では限界があります。(特殊な仕掛けをすれば別ですが。)
ここまで話すと、新しいことにチャレンジして「脱藩」した方が良いに決まってるのですが、万人におススメはできないです。やはりリスクは発生するので、それを受け入れる覚悟のある人が次の時代を創るのだと思います。
日本全体のことを考えると、優秀な人材がリスクを抑えてスタートアップできる制度なり仕組みができるともっともっと新しいビジネスが生まれるのではと思います。
「藩」を飛び出した世界には今までと違った世界があり、日本全体を苦しめる閉塞感や大企業で感じる何かしらのモヤモヤを外の世界から解釈することができます。
パラダイムシフトに備える投資を
テクノロジーの発展によりこれから迎えるパラダイムシフトにおいては、多角的に考え、能動的に行動を起こすことが求められています。
会社から言われたことはこなしつつ、先見性を持って言われていないことをやる度胸と行動力が問われています。ここにAIやIoT、ブロックチェーンのビジネスを牽引するための力が養われるのだろうと思います。
会社であれば株主に対して背を向けるぐらいの覚悟がいるということ。上司や組織には背き(良い意味でね)、カスタマーファーストになることです。
確かに初めはお金は赤字を垂れ流すかも知れませんが、そのあとに跳ね返ってくる「人材」という資産は目に見えなくとも確実に将来化けることになります。
ここに自分を投資できるか、あるいは会社として投資できるか、選択が迫られています。
ゼロイチ人材
数字という共通言語により統制された現代
ITシステムは皆さんの見えないところで機械化され、さまざまな業務に作業効率をもたらし世の中を便利にしました。
普段は目に触れることがないのですが、例えば銀行にお金を預けたり、振込したりしますよね?航空券の予約だったり。
製鉄所なんてのも24時間稼働してないとだめなのですが、鉄釜の温度調整などをシステムで管理してます。
ITは経営に密接に繋がっているのは自明なのですが、これが意外と理解していない企業が多いのが現状です。
何故か。
指標化するのが難しいから。売り上げを上げて数字として現れているのは営業成績だから。
(もちろん全て機械化されてるビジネスはその限りではないですが)
巨大企業であればあるほど組織の統制をきかす上で最も単純な方法は数字に変換してしまうことです。
世界共通言語ですし、他の組織との共通言語にもなるので、そっちのが管理するのに楽なんです。
システム部上がりの人は、コストカッター程度にしか見られてませんでした。
会社への貢献を何で測るかが難しいのですが、いまのところは目に見えた利益という形でしか評価がないのも現実です。
正確にはフェーズによって求められる人材が違っていて、ここまでは利益直結型の評価は理にかなっていたんです。
少し昔に戻って例えてみます。戦後間もない頃、日本は焼け野原になり何もなかった時でした。
この時、0→1を創り上げるゼロイチ人材が世の中に必要だった。ソニーの井深さん盛田さんとか松下電器の松下幸之助さんとかHONDAの本田宗一郎さんとか。いわゆる起業家と言われる方々。
その次の時代は1→10(イチジュウ)にするフェーズで、この辺りか事業家と言われる人が活躍。1あるものを10にする力。これも大変ですが、効率化とビジネス開発のバランスが必要なフェーズですね。
安定経済の時期の10→100(ジュウヒャク)のフェーズは経営者と言われ、効率化してスケールさせるところですね。
いままさに大きな企業は10→100(ジュウヒャク)にした人が中心です。
さて、これからの時代は何が起きるのか。
AIといわれる人工知能によって、いままで人間が価値として認識してこなかったものが、目に見える形になって価値になる時代に突入しました。
スマホを通して人間の言葉、文章だけでなく、体験や感情、画像、動画、共感、こういったものが新しいビジネス的な価値を持つようになりました。
さて、こうなると困ったのが10→100(ジュウヒャク)にしていた経営者です。
既存のものを巧みに活用して、戦略を論理立てていけば解けた解が、解けなくなりました。
料理人に例えると、いままでレシピも材料もあった。あとはどう効率化して料理のクオリティを上げるかに集中していれば良かった。
しかしAI時代に突入すると、もはや見たことも聞いたこともない島にいきなり連れていかれ、まったく知らない人種の人たちにおいしい料理を振舞って喜ばせてあげてくださいと言われているようなものです。
あるのは美味しい料理が作れる最新の調理器具(テクノロジー)のみ。あとは裸一貫。
みなさんが料理人だったらどうするでしょう?
ジュウヒャク人材とゼロイチ人材
10→100(ジュウヒャク)の人はとりあえず、今までと同じように組織の力で材料を取り寄せ、レシピ通りに自信のある料理を試すことでしょう。
一方で、0→1(ゼロイチ)の人は違います。
この島に住んでる住人と対話し、その島の伝統文化や日常などを見に行き、どんなものが舌に合うかを注意深く観察するはずです。時には島の人にご馳走になったりすることもあるでしょう。島の人や自然などから感じる潜在的なニーズ探しにふらふらとしています。
さて、この0→1(ゼロイチ)の人の行動は、10→100(ジュウヒャク)の人からすると、あいつは何やってんだ全く楽しそうだな、全然料理作ろうとしないで何考えてんだ、となりますよね。
ところがこの島の人は実は普段は米も食べなければ、小麦も食べない。
それよりも、毎日の朝にかかさず飲むココナッツやトウモロコシなどを食べることが文化として根付いていた。
そこでこの0→1(ゼロイチ)の人は現地の秘伝のココナッツや美味しいトウモロコシなど現地の素材を住人と苦労して探して、一緒に調理器具を使って振る舞った。
さて、どちらのお店が繁盛するでしょう?
極端な例でしたが、AI時代のいまの縮図はそんなところです。
さらには100→1000にするというわけわかんない発想でAI活用だなんて話になるから、そもそもAIやテクノロジーが誤った方向に使われ始める。
それで、AIって何なんだ、使えないしわけわからないし効果ないじゃん。で終わってしまうのです。
これでは益々テクノロジーに取り残されます。
ひどい料理人になると、いまここがまったく知らない場所に連れてこられたということもさえもわかっていない場合もあります。
繰り返しになりますが、今まで目に見えなかったモノがいきなり目の前に現れました。そこでそのモノを価値に変えていくことが求められています。
どんな舌を持っていて、どんなものが好みなのか、お腹がそもそも空いているのか(どんなものに潜在的なニーズがあるか)を洞察し感じる力や、それに必要な材料がわかり仕込める力(データを集めて整理できる力)、そして調理器具を巧みに使いこなせる技(テクノロジーを使いこなせる技術力)の3つがこれからの時代に必要です。
こういった力は0→1(ゼロイチ)を作るときに力が養われます。
突如として見たこともないものに遭遇したときに対応できる柔軟な組織や文化が大企業にあるでしょうか?
私たちの会社は新規事業部がある、と思っている方も多いかもしれません。しかしながらその成果は10→100(ジュウヒャク)にする評価プロセスに乗ってるのではないでしょうか?
10→100(ジュウヒャク)にすることが成果として評価される組織で、まったくどうやったらゼロイチ人材が育つのでしょう?
ジュウヒャクで築いた企業文化が邪魔をする
いろんなお客様や役員の方ともお話ししてきて思いましたが、ゼロイチをどんどん作れとおっしゃる役員は大企業に1人いるかいないかです。
大企業が難しいところは、一人の役員だけでは社内の文化を変えることができないところです。ピータードラッカーの名言『文化は戦略を朝飯前に食っちゃうよ』にもある通り、文化というのは変えることが1番難しく、強力なんです。
文化を変えるには強力なトップダウンか、あるいは出島戦略(これはまたの機会に書きます)を取り、外の世界と繋がりじわりじわりと変わらないと行けないと言う警鐘を社内外で鳴らし続けることが肝心です。また、スタートアップと組んだりすることも重要です。
ゼロイチ人材
もはや3年目〜5年目ぐらいの若手全員をどんどんスタートアップに挑戦させて自分たちのビジネスを食ってから戻ってこいぐらいの気概が必要なんじゃないかと思います。
シリコンバレーに行かすぐらいなら、私は課題先進国の日本で挑戦した方がよっぽど先駆けたビジネスになると思っています。技術的にも素晴らしい中小企業も沢山あります。
こういった若い人たちが次のリーダーになり0→1を作っていかなければいけません。
IBMでは全社員にAdvocacy(アドボカシー)活動を行えと言っていました。
私も大いに賛成で、組織や企業の枠を超えてユーザーが何を感じ何を欲しているか、深く洞察する力を養うことが必要です。
縦組織や細かく区分けされた組織の範囲ではないエリアに今後のニーズがあるはずです。
越境とか脱藩とか色々と表現はありますが、こういった領域にもゼロイチ人材が育つ場所があります。
上から言われてAIやブロックチェーン、IoTを活用したビジネスを考えるのではなく、ゼロイチ人材はそこから自然と強力な解決したい何かや仮説が奥底から湧き出てくるはずです。
ゼロイチ人材を育てる文化をいかに築くかは既存のビジネスとは違う異分子を認め、活動を評価し伸ばせられるかです。
AI時代に突入し、今、企業のトップの力量が問われています。
幕藩体制と武士の関係性に見る現代社会との関係
幕藩体制と武士の関係性
前々回のブログで「脱藩」という言葉は、”今ある枠組みを越えよう”という意味、と書きました。
もう少しわかりやすくするために、昔の武士と藩との関係性から現代の意味を解釈してみようと思います。
江戸幕府は平和な政権がおよそ200年以上も続いた、世界でも稀な時代です。徳川は1603年に征夷大将軍に任命されてから1868年に大政奉還されるまで、戦いのない時代を作り上げました。
日本はこの時代に今の政治や社会に通ずるところの基礎を築き上げました。
日本の国としての基礎は戦後でも、明治維新でもなく、さらには自民党でもなく(笑)、私はこの江戸時代に形成されたと思います。日本人としての気質や、礼儀、教育含めて、です。
実はあまり気づかないかもしれませんが、日本は未だにその延長にいます。
江戸時代から続く悪しきものもあるのですが、これはまた別の機会にでも書きます、「徳川の呪縛」とでも題して。笑
さて、江戸時代の終わり、日本人のアイデンティティを作っていたのは幕藩体制と武士です。日本人をどう表現するか、という問いに対する答えは新渡戸稲造が武士道で書いています。このあたりも深掘りすると面白いのですがまた今度に。
アイデンティティを形成していた幕藩体制と武士との関係性が希薄化していた当時、黒船により脆くも崩れ落ちて明治維新という流れが生まれました。
現代の労働と日本人のアイデンティティ
では今の日本人のアイデンティティを形成しているものは何か。
それは会社とサラリーマンの関係、すなわち働くということです。会社に所属し働けば身分を保証し、健康保険や年金の支払いも会社を通してやってくれます。
いつからか会社に帰属し「労働」することが、その人の人生そのものをアイデンティティ化することになりました。
(この辺りは、宮崎駿監督作品の千と千尋の神隠しを見てください。)
さて、マルクス経済が成り立つこの世の中では上記の考えが当たり前になっています。
そして、エリート教育をうたう進学校教育は良い大学、良い会社で働くことが全てだと教え込みます。
では良い会社に所属して仕事をしていれば、将来安泰なのでしょうか?会社に所属していればやり甲斐を得られるような幸せは待っているのでしょうか?
私はそうは思いません。
テクノロジーの観点で言えば、既存のルール、制度は全て一昔前のもので、だんだんとそこに歪みが生じ始めています。
テクノロジーが破壊し始めた会社と労働者の関係
LinkedInなどの登場によりキャリアはオープンになり、流動性が高まってきました。
また働き方や仕事自体もソーシャルネットワークで拡散されるようになり、もっと働きがいのある会社に人材が集まって行くようになりました。
今後は社会保証や年金も国に丸投げする時代は終わり、自分たちで責任を持つ時代に突入すると思います。
そうすると飽和状態の経済と、給料が低い若い世代は、自然とやりがいや将来を見据えて仕事を複数持つような時代になります。
これによりピラミッド型に支配されていた雇用者と被雇用者の関係性は徐々に崩れ始めます。
会社でのし上がるのではなく、幸せに生きることへのシフトです。会社にのし上らずともソーシャルやコミュニティで承認欲求を満たせるのでこちらの生き方の方が生活の質が向上できると気づき始めたのです。
さらには会社で働くということ以外にも、個人でブログを書いたり動画をアップしたり、コンテンツを創るだけでなんらかの社会との関係性を持てるようになり、承認欲求を満たせるような時代となりました。
もはや会社で働くという日本人を形成していた求心力は薄まりました。
これはあたかも幕藩と武士との関係性が希薄化し、その幕府が倒れたように、その歴史が繰り返される前兆にあるように見えます。
未来は予測できないということを認知する
いまビジネスの現場で、自分の会社や自分の組織のみの数字を追ってる方は次の時代に何が起きるか予測できないでしょう。
想像できない、といったほうが正しいかもしれないです。未来を予測することは当然難しいのですが、これからは少なくとも「未来は予測できない」ということをきちんと「認知」しないといけません。
これからの社会やビジネスは、今までの延長ではダメで、新しい枠組みをみんなで作るという新しいムーブメントや取り決めが必要なのです。
デジタルテクノロジーを甘く見すぎた日本
これらを打破するためにも、テクノロジーを活用しなければならないのですが、日本はテクノロジーを甘くみすぎました。
テクノロジーに投資した国はしっかりと人材が育っています。しかしながら日本は、デジタルに関するテクノロジーは、士農工商でいうと(古過ぎるかもですが笑)、工商程度にしか見てません。
政府の人工知能や最新のテクノロジーに関するお金の額や取り組みを見ていてもこれは明らかです。
この問題は非常に根深く、教育などの問題もありますが、それはまた別の機会に書きます。笑
パラダイムシフトを乗り越えるためには、テクノロジーとともに社会、政治、経済などを複合的にみなければなりません。
幕末の武士が自分たちを守ってくれていた唯一の存在である藩を投げ出してまで新しい枠組みを作ったかのごとく、いまある既存のものを否定し、新しい時代を創造する発想と行動がいま求められているのです。
それぐらいのインパクトを持つ黒船が、AI, ブロックチェーン, AR/VRなどのテクノロジーなのです。
テクノロジーの黒船を活かすも殺すもリーダー次第
この黒船を取り込んで、新しいことを成すことがいまのリーダーに求められています。
この世界では過去の成功体験や、一般的な理論は通用しません。
ビジネスで言えば10を100にする力ではなく、これからは0から1を創れる人が必要なのです。
それは「問題を解ける人材」ではなく、「問題を設定できる人材」です。
みなさんの会社にテクノロジーに精通する右腕人材はいらっしゃいますでしょうか?デザイナーやアートの発想でビジネスを創造する人はいますでしょうか?
こういった人材を育てる施策をしているでしょうか?
皆さんの会社のリーダーは数字ばかりを追うコテコテの営業出身の人ばかりではないでしょうか。
幕末の志士たちは、外の世界とつながり新しい時代を創造しました。外の世界で何が起きているか、その情報感度を高め、お互いにスキルを付け合いながらゲーム・チェンジを起こしました。
前職では、そういったコミュニティー活動や現場を目の当たりにしているので、今後時代が変わるということを肌で感じています。
繰り返しになりますが、時代は変わります。黒船を活かすも殺すも、リーダー次第。
今年の抱負
今週のお題「2018年の抱負」というはてなのお題につられて考えてみました。
昨年の抱負にしていた漢字は「実」でした。この数年やってきたことを実りに変えるという意味でそうさせて頂きました。
前職ではこの数年やってきたことが社内にも伝播され、新生チームが結成されるなど実りがあったのかなと。
それとプライベートでは第一子誕生と公私とも「実り」ある年でした。
さて、今年の抱負を漢字一文字で表すと「直」です。
ひたむきに、直ぐに、直す(なおす)という意味があるのでこの漢字にしました。
だいたい次のような3つを今年の目標にします。
- ひたむきにジョインしたスタートアップで結果を出すこと
- 後回しにせずに直ぐに取り掛かること
- 新天地に移ったので少しずつ身の回りの整理整頓をする
家族も増え、将来のことも踏まえて自分の中のミッションスタートメントをクリアにして、真っ直ぐに進む年にしようと思います。
今年もよろしくお願いします。
脱藩しました
脱藩しました
本年度をもって9年弱務めたIBMを脱藩(退職)しました。
テクノロジー業界は異動も激しい業界なので、もはや何も驚くことはないかなと思います。
この数年はIBMのデベロッパー•アドボケートとして開発者支援を担当させて頂きました。
IBM BlueHubの活動とも関わりながら、最新のテクノロジーをスタートアップの方や開発者向けに勉強会を開いたり講演したり、また大企業を巻き込んだオープンイノベーションの技術リードするなど様々な取り組みを経験させて頂きました。
お世話になった方々にはこの場を借りて御礼申し上げます。
さて、私が何故IBMを辞めたのか、次は何をするのか、というところをここ最近の出来事から辞めるまでのエピソードを交えてお話ししたいと思います。
評価することが難しいお仕事
この数年は開発者支援やスタートアップ支援をしておりました。この領域はビジネスへの貢献度を指標化することが難しい領域として知られています。一般的にはデベロッパーリレーションという職種で、グローバルのカンファレンスがあった際も同じような悩みを同じ職種同士で共有しあっていました。
世界のどこの企業も同じように困っていて難しい領域だな〜と感じました。
とくに最近の新しいテクノロジーであるAI(人工知能)やIoT(Internet of Things)、Blockchain(ブロックチェーン)などの勉強会やイベントを通して直接肌で感じたことは、技術的なスキルだけではこの領域を使いこなすことは難しい、ということでした。
もはやこれは新規事業やオープン・イノベーションなどのビジネス側と一緒にやっていかなければ、意味がないと強く感じました。
ですがお客様の新規事業やオープン・イノベーションのご担当の方も、こういった意味不明な技術領域においては、評価の基準(KPI)を見出すことが難しく、会社からの評価もかなり苦労されているものとお察しします。
新しいテクノロジーの登場により、既存のビジネスは破壊される運命にあります。そこで新しいことを始めなければ自らが淘汰される存在になります。頭では誰しもがわかってはいるのですが、必ずしもうまくいくとは限りません。IBMも例外ではなく、当然社内からの評価も厳しく見られていました。
砂場に水を巻いて何になる?というような評価を受けるようなこともありました。楽しそうにしてるだけで、ビジネスを生んだない。そんな評価を受けることがほとんどでした。
新しいことを始める者の宿命なんだと思いますが100年以上続く大企業でこういった動きは異物として捉えられてました。ただIBMが持っている潜在的なDNAには、異物から生まれる変わる風土があると信じていましたし、オープンイノベーションやAPIエコノミーを様々なお客様と築くという気持ちだけは会社からの評価うんぬんよりも勝っていて、色々と自由にやらせていただいておりました。
そして開発者の地位を上げ、イノベーションが起きやすい土壌を日本全体に醸成する事を目標としていました。
この考えを達成するには、IBMはもってこいの場所で私にとってのバンテージ・ポイントでもありました。(日本語で「見晴らしのいい地点」「優位」 「地の利がある」 というような意味。)
あるスタートアップとの出会い
ある時、友人から連絡が入り、自分が入ってるスタートアップを手伝って欲しいと言われました。
私も技術者視点でも面白そうだなと思い、興味本位でお手伝いすることにしました。
そこからが始まりでした。
テクノロジーが確実にパラダイムシフトを起こし始めた
スタートアップのお仕事を少しずつ手伝うことになってから、あまりにもスピード感が早すぎてカルチャーショックを受けたのを覚えています。
新しいテクノロジーだろうとなんだろうとすぐに学びすぐに実装しリリースされサービスが改善されていく。
普段は大きな企業から見ていた景色と、このギャップを肌で感じ、私は日本の大企業の危機を痛烈に感じました。
果たして日本の大企業が、こういったスピードとテクノロジーを持ったスタートアップと世界で戦って行けるのだろうかと強い疑問を持つようになりました。
IBMのデベロッパー・アドボケートをしていて、アメリカやイギリス、東アジアの担当と情報交換することが多かったのですが、とくに日本の多くの企業においてテクノロジーへのリテラシーの低さに対して唖然としました。
ITなどのテクノロジーは、会社経営を効率化するためのツールとしか捉えてない日本の企業の多くは、AIの活用はまだまだ遠く、この分野では圧倒的な敗者でしかないと感じました。
これは今後ブログに書きたいと思いますが、様々な原因があるとは思います。
そしていま何が起きているのか。
既存のビジネスがうまく行ってる企業ほど気づかないと思うのですが、AIやIoTなどのテクノロジーをうまく活用しながら、まったく新しい働き方、新しいビジネス、新しいロールモデル、新しい会社の概念が生まれ始めています。
AI、IoT、Blockchain、AR/VRなどのテクノロジーは確実に社会や組織にインパクトを与え始めており、新たなパラダイムシフトが起き始めています。
破壊的なビジネスの例でUberがよく出てきますが、大したテクノロジーを使ってるわけでもなんでもないので、私的には参考になりません。
技術的ブレークスルーから非連続に生まれた先程のテクノロジーの領域においては、これからもっとすごいビジネスが生まれてくると思います。
現代脱藩論
一部では脱藩という言葉を現代風に言うと転職という意味にも使われてるようですが、ここではそういう意味ではありません。
今までの枠組みを超えるという意味です。
会社や組織、社会に縛られていたことを脱して、違う世界を見ようという考えです。
新しいテクノロジーを活用し、新しいビジネスを創造して、働き方や価値観、企業文化を変革し新しい社会をみんなでつくっていこうというものです。
今ある常識は疑い、チャレンジしなければならない時代がやってきました。
数年前まで誰がシャープや東芝があのような状態になると予測できたでしょう?気がつけば日本のMade In Japan神話は崩れました。最近あまり聞かなくなりましたね。。。
パラダイムシフトを乗り越えるには既存の延長線上にあることをやっていてはいけません。
既存のルールや枠組みありきで始めるのではなく、ゆるいつながりから誰もやったことのないことに挑み、幕末の如くゲームチェンジを起こしていくことが必要です。
今多くの企業で新規事業やオープン・イノベーションという取り組みがありますが、まだまだ評価を得るには苦労しているはずです。
幕末はお互いに所属している藩を抜け出し、一つの求心力をもとにゆるいつながりから、歴史をひっくり返すような革新的な取り組みが生まれました。わたしは転職をしようだとか、スタートアップをしようだとかを言ってるわけではなく、マインドを変えていこうと言っているだけです。マインドを変え、このパラダイム・シフトを乗り越えるために、所属組織の仕事とは別にゆるいつながりを外の世界(異なる組織、異なる会社、異なる職種、異なる業界)でつくっていくことが必要です。
とは言え実は結構根が深い問題で、教育も変えなければならないし、今あるルールも変えていく必要があります。こんなこと一人でできることは不可能ですが、団結して大きな力の外圧で変えられるのではないかと思っています。
企業にいる方は、いまもし会社のなかで10年、20年上の先輩と同じキャリアを目標にしているとしたら、それは危険です。
スタートアップの世界や開発者のコミュニティーの世界で何が起きているか、この目で確かめに行ってください。
外の世界(異なる組織、異なる会社、異なる職種、異なる業界)と繋がることを常に意識していかなければこのパラダイム・シフトは乗り越えることはできないでしょう。
これからについて
IBMという大きな企業での先程のような課題感を持って活動していましたが、自分にはまだまだ力不足のところがたくさんあると痛烈に感じる数年でした。と同時に、IBMで感じた課題は、日本の課題の縮図であると感じました。
もっと広い世界で挑戦したほうが成長できるかもしれない、何か変えられるかもしれないと思うようになりました。
そこでIBMを辞めて、先程出てきたスタートアップであるストックマーク株式会社にジョインさせて頂くことになりました。
そこで味わえるものは大企業では味わえない成長が待っていると確信しましたし、優秀な同世代の仲間がいました。
現代脱藩論を細々と(?)提唱しつつ、大企業ではできなかったこと、ストックマークでしかできないことをやっていこうと思います。
IBM時代には金融系のエンジニアから始まり、クラウド、マーケティングなども幅広く経験させて頂いてましたので、その広い経験を活かしていこうと思います。
今後もストックマークのことや、スタートアップ界隈の話、AIなどのテクノロジーの話、オープン・イノベーションなどの取り組みなどはこのブログで書いていこうと思います。