狐兎の雑記帳

あまり歌えてない、歌ってみたの人の雑感。

旅立ちの日に

過日、職場に、別の場所に転勤していった同僚が挨拶に来ていた。以前から聞いていたことだったが、結婚を期に海外に住むことになったそうだ。

後輩だったけれど、私よりよっぽどしっかりしていた彼女は、海外に行くことに不安は?と問われて半々、と答えていた。

不安半分、期待半分だ、と。

不安を覚えるということは、現実をしっかりと見ている、ということだ。
言葉が通じない所に旅行に行くだけだって随分恐いことだし、しかも、このご時世だ。不安を持たないわけにはいかないだろう。現状を把握し、落ち着いて観察できているからこそ、困難を自覚されているのだろう。それは、彼女が移住するまでの予定を話していても伝わってきた。

しかし、期待も半分あるという。
期待があるということは、不安を解消していく目あてや手立てがある、ということだ。
それは、新しい生活を迎える人たちに、是非とも持ってもらいたい感覚だと感じた。
先行きに不安を感じるときは誰にだってあるだろう。その不安を乗り越えるために自分が何ができるのかを考え、予測し、対策をとることが、新しい生活への期待に繋がるのであろう。

幾つかの思い出話と、幾つかの将来のプランを笑顔で話して。最後に、以前よりも落ち着いてみえる所作で御辞儀をして旅立ってゆく同僚を、職場の皆で笑顔で見送ることができた。

願わくば、私が僅かでも関わることができた方たちが、事実を的確に把握した不安と、それを乗り越えられるだけの計画と期待をもって、新生活をはじめられますように。
彼女に限らず、すべての友人たちに対してそうでありますようにと。

犬派?猫派?

今週のお題「犬派? 猫派?」

猫派、かなぁ?

小さい頃、飼うことを憧れていたのは猫だ。
小さく愛らしいふわふわしたいきものが自分の傍らでにゃぁにゃぁ鳴いている様子を想像するにつけ、いつかはそんな暮らしをしてみたいなぁとぼんやりと憧れていたものだ。

そして、犬という存在は、小さい頃の私にとってあらんかぎりの勢いで恐ろしいもの、であった。
三十年余り前、犬と言えば番犬という印象が強かった。可哀想に、重い鎖に繋がれた番犬たちは、家の外の小屋のなかで独り寂しく夜通しの番に就き、近づくものには警戒心剥き出して吠えかかる。散歩に出ようものなら、周囲の敵を警戒し続け、隙有らば噛みついてやろうと虎視眈々、狙いを定めているもの……



……という、非常にアホらしい勘違いをしていたのである。小さな頃の私は。

実際、大人になってから猫を飼う機会に恵まれたが、お猫様はあんまり鳴かれなかった。
にゃー、とも鳴かないお猫様は、傍らにじっとしていることも余り無く、いつも好き勝手に自分のやりたいことを、お猫様がやりたいようにやっていらっしゃった。
仕事をしているとパソコンのキーボードに無遠慮に座り込み、なんだい頭でも撫でてやろうかと手を伸ばすと、ついと顔を背けて部屋から出ていってしまう。まあ、それがまたいいと思う飼い主にやってみせている辺り、飼い主が悦ぶツボをしっかと心得ていると云えなくもない。流石、お猫様。

また、お犬様に至っては、今、我が家で飼っているパピヨンをムツゴロウ氏よろしく可愛がりまくっている。
躾れば無闇に吠えることは減らせるし、無条件に愛嬌を振り撒く様子は頬が緩まざるを得ない。
散歩に出れば誰かに会える期待が風船のように膨れ上がり、歩く様子はうきうきと可愛らしく、終始しっぽは振りっぱなし。はーかゎぃぃ……


番犬?中飼いしているからか、誰に対しても警戒心少なく、直ぐにシットからのダウンを見せて、とてもとても幸せそうですよ?ほとんど吠えることはありませんし。
唯一吠えるのは玄関のチャイム。だーれか来たーーー!とまぁ、嬉しそうに喋っている感じ。怖さ零。


ただ、どちらがより好みか、と天秤にかけたときに、は、ですよ?

最初からにこにこすり寄ってくる子も可愛らしい。けれども、いつもはつん、とお澄まししているのに、プライベートになるとデレ……あ、いや、可愛らしい一面を覗かせてくる子の方が、やや天秤が傾くかな、と。

相手と一緒に居たいけれど、なにもかも拘束するのは好き、じゃないと思うので。

なので結局。

猫派、かなぁ?と。

好きな街

今週のお題「好きな街」

生まれてこのかた、田舎町に暮らしている。
大学も地元の学校に通ったため都会に出ることはなく、一人暮らしも社会人に成ってからの数年だけ。それも僻地の勤務のためだったので、実家よりも山あいの町で暮らしていた。

住めば都の言葉通り、住んだ街はどれもそれぞれ好きな街になった。今住んでいるのも、実家に程近い故郷の町並みのなかである。しかし、好きな街というお題をみて真っ先に思い出したのは、都会の風景だった。

学生時代、友人の伝を頼って遊びに行った新宿の街並み。ビルディングの狭間から見上げた真っ青な空。人で溢れるスクランブル交差点。神田の古本屋街を歩いたのは一度きりだったけれど、街路樹の脇の、露天に置かれた古書の色合いが、妙に懐かしく思い出されるのだ。

特に、ラッパを教わる為にオペラシティまで歩いた錦糸町と、知古が住んでいた中野の生活感のある大通り。飲みに連れていってもらった鶯谷の狭い路地、他に場所を知らなかったこともあってデェトで待ち合わせに好く撰んだ池袋から新宿周辺。
あの、人工物に囲まれた、繁雑なコンクリート構造物のなかから見上げた、空。ACE COMBAT4シャタードスカイ宜しく、切り取った空を見上げる街が、堪らなく好きだった。

都会の人たちにとっては、何てことのない、ごくごくありふれた風景だろう。
もしも貴方が、あの都会の空気感の中に暮らす人たちであるのならば、夏の好く晴れた日の青空か、雲が細くたなびき大きな満月の懸かる秋の夜空を見上げてみて欲しい。
それが、私が憧憬を込めて見上げた、懐かしい、好きな街の風景。私が憧れて、ついぞ手に入れようとせず、失って久しい風景。
それが、貴方にとって好きな街になりますようにと。

恥をかく書き始めに。